キューバ政策転換の特徴

今回の一連の動きは、ローマ法王などの努力があったとはいえ、基本的には米国側のイニシアチブによるものです。その根底には米国の外交姿勢の転換があります。

だから、「双方の思惑が一致した」などというのはおよそ分析の名に値しません。これらの動きを分析するためには、米国側の姿勢転換の特徴を分析しなくてはなりません。

これまで米国は何回か大きな外交路線の転換を行ってきました。たとえばケネディによる平和共存路線、ニクソンによるベトナム戦争終結と中国との国交回復などがあげられます。

これらの決断に比べれば影響は大きいとはいえませんが、決断の内容はそれらに勝るとも劣らない程のもので、その波及効果は今後注目されるべきです。

第一の特徴 総括を伴う転換

最大の特徴は、これまでの路線に対する「総括」を伴う転換だということです。オバマは12月の声明でこう言っています。

アメリカの外交政策で賞味期限が切れたものがあったとすれば、それは対キューバ政策だ。これまで失敗してきた時代遅れの手法を終わらせる。頑なな政策は、私たちのほとんどが生まれる前に起きた出来事に根差すものだ。それは米国人のためにもキューバ人のためにもなっていない。

過去に対キューバ政策の転換を唱えた政治家はいたが、これだけ明確に過去の政策を弾劾したものはいません。オバマはそこまで立ち入ったことによって、逆に支持を獲得したのだと思われます。

過去のケネディやニクソンの路線転換は「総括」を伴ったものではありませんでした。それはパワーポリティクスやゲオポリティクスの枠組みの中でのみ処理されてきました。だから彼らが打ち出した新路線はケネディ戦略とかニクソン戦略と呼ばれてきました。

今回の路線転換はもっとラジカルに、21世紀型思考への変更をもとめるものとなっています。

これが最大の特徴です。

第二の特徴 外交による解決というオバマ路線の貫徹

レーガンからブッシュ親子へという共和党政府24年の歴史は絶えざる干渉と侵略の歴史でした。それから見ると、オバマは一度も新たな出兵を行っていません。厳密に見ればアフガンの武装を強化したり、リビアやシリアへ出兵の構えを見せたりと、危ういことはたくさんありました。現在でも無人機の攻撃は続けられています。

これはイラクからの米軍撤退を公約に掲げて当選した時からの彼の基本的姿勢が影響していると思います。彼は自らの外交を「関与」の路線と名づけています。強大な軍事力を背景に、軍事力を使用することなく、外交で解決の可能性を探るというものです(ニューヨーク・タイムズとのインタビュー)。

その唯一の例外がキューバだったわけで、武力行使こそないものの、外交関係の断絶と非人道的レベルにまで達した禁輸、キューバ政府転覆活動への公然・非公然の支援は事実上の戦争状態です。これを部分的にせよ改めることで、オバマの「関与」路線は初めて首尾一貫としたものとなるわけです(パレスチナは残るが)。

イランなど中東の関係者は、キューバとの交渉に注目しています。そのプリンシプルは中東にも適用されるべきものだからです。

第三の特徴 大統領権限の一方的行使

そのやり方の特徴は大統領権限を一方的に行使して、世論を味方につけながら政策を遂行していくことです。

現在、議会はティーパーティーに牛耳られ、議会の同意を得ながら進めることはほとんど不可能になっています。それだけ二大政党間の対立、ひいては米国における階級対立が厳しくなっているからです。

議会選挙で共和党が優勢な理由(オバマが不人気な理由)についてはいろいろ挙げられますが、同時に、富裕層を代弁する共和党に対して、世論がオバマ以上に冷たい視線を浴びせていることも見逃せません。

つまり、オバマ政権は議会では少数派でも、世論の後押しを受ければ政策を実現できるという、ちょっと変則的な局面にあるといえます。

こういう少数与党の政権運営は、政党対立が厳しいラテンアメリカではよく見られる現象です。今回のキューバとの関係改善という過程の中で、それが典型的に示されました。

残る1年半の任期で、この手法でどれだけ成果を積み上げられるかが注目されます。その意味でもキューバ交渉は試金石となっています。