鳥畑与一さんが「異次元緩和」の行く先を、あらあらの形でシナリオ化している。

この通りになるかどうかは別として、一応紹介しておく。

1.日銀はいつまでも国債買いを続けられない

市中に国債は枯渇しており、年金運用機構からの放出を促している。しかし新規国債発行との調整はいずれ破綻する。

2.バーゼルの国際決済銀行(BIS)が自己資本規定の第4弾を出す

この新規制は国債保有リスクも算入することになる。日本銀行の格付けが下がればすべてのフィクションは破綻する。

3.インフレがリフレの枠を超えて進行する

このとき、金融の引き締め策はほとんど不可能になる。なぜなら引き締めは国債購入の抑制を通じて行うことになるから、たちまち国債は市中に溢れ、暴落(利回りの急騰)を引き起こすからだ。

そこに超大型のギリシャ型破産国家が誕生する。


鳥畑さんは3つ並べたが、私が考えるには1.と2.はどうにでも切り抜けられるのではないかと思う。1.については年金という打出の小槌はまだまだ相当使い出があると思う。2.については、場合によっては知らんぷりしてしまうこともありうる。

やはり決定的な問題は、インフレが政策インフレの枠を超えてスタグフレーションへと移行し、暴走を開始することだろう。

インフレは、国民の余力があるうちは吸収しうる。しかしこれは時限立法だ。大量の通貨発行で名目賃金はわずかに上がったが、実質賃金は確実に低下している。すでに限界は近づきつつある。

どこかで下方への柔軟性が失われるポイントがある。その時一気に危機は顕在化するだろう。

政策インフレのもう一つの側面は、資本輸出の低下だ。貿易収支は、輸出産業を除けば赤字基調が続くだろう。これを補うのが貿易外収支だが、円安とインフレは、長期的には、ますます輸出資本(ドル)の目減りをもたらすだろう。

これにより国際収支が恒常赤字化するポイントがかならず来る。その時はっきりするのは、「円はドルではない」ということだ。日本の地力が落ちれば、円は紙くずになる。

インフレ政策は諸刃の刃であり、負の側面が必ず露呈する。インフレ政策はありうるオプションであるとしても、それはテンポラリーなものだ。必ず期限を切ること、必ずそこからの脱出計画を持つことが必要だ。

要するにそれは、麻薬であり、ズルズルとハマれば末路は廃人でしかない。