大変な判決が出たものだ。推進派は真っ青だろう。

これが通れば日本の原発はアウトだ。原子力規制委員会など何の意味もなくなる。

とりあえず判決要旨(正確には要旨の要旨)を掲載しておく。法律言葉というのは、私の感覚からすれば悪文の極みであり、相当センテンスをぶった切って修文している。小見出しは私の付けたものである。

NPJ訟廷日誌 より

高浜原発3、4号機運転差止仮処分命令申立事件

主文

1 関西電力は、福井県大飯郡高浜町田ノ浦1において、高浜発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。

2 裁判費用は関西電力の負担とする。

理由の要旨

1. 基準地震動について

A) 「基準値振動」を越えれば大変なことになる

「基準地震動」は当該原発に想定できる最大の地震動である。基準地震動を超える地震が到来すれば、施設が破損する。施設の設計は基準地震動を超える地震を想定していないからだ。

その際、事態の把握は困難で、時間的な制約の下で収束を図るには多くの困難が伴う。その結果、炉心損傷に至る危険を含んでいる。

B) しかし実際には「基準値振動」は何度も越えられている

現在、原発は全国で53基あるが、その所在地は20ヶ所にも満たない。このうち4ヶ所で、「基準地震動」を超える地震があった。それも、この10年足らずのあいだに起きたのだ。

ゆえに、これらの原発で「基準地震動」の値は信頼出来ないことが明らかになった。

C) 高浜原発だけが信頼に足る「基準値振動」を持っているという根拠はない

本件(高浜)原発の「基準値振動」はこれら4つの原発と同一の手法で定められている。すなわち、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析である。

それにもかかわらず、本件原発の地震想定(700ガル)だけが信頼に値するという根拠は見い出せない。

D) 「基準地震動」を基準とすること自体にも問題がある

基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値ではないし、観測そのものが間違っていることもある。原発の基準地震動を策定すること自体が無意味であり、合理性は見い出し難い。

これは基準値振動の提唱者自身が語った言葉である。

2.「基準値未満なら安全」とはいえない

A) 関西電力の無責任な耐震安全性引き上げ

高浜原発が運転を開始した時、基準地震動は370ガルであった。その後、「安全余裕がある」との理由で550ガルに引き上げられた。このとき根本的な耐震補強工事は行われないままだった。さらに新規制基準が実施されたのを機に、700ガルにまで引き上げられた。このときも根本的な耐震補強工事は行われないままだった。

原発の耐震安全性確保の基礎となるべき「基準地震動」を、何のしかるべき対応もなしに数値だけ引き上げるということは、社会的に許容できることではない。債務者(関西電力)のいう「安全設計思想」とも相容れないものである。

B) 700ガル以下なら安全だろうか

とはいえ、関西電力は基準地震動を700ガルまで持ち上げた。では700ガル以下なら安全だろうか。

実際には700ガルを下回る地震によっても、①外部電源が断たれ、②主給水ポンプが破損し、③主給水が断たれるおそれがある。関西電力はこのことを自認している。

外部電源と主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉の本来の姿である。外部電源と主給水は安全確保の上で不可欠な役割を担っている。これら「第一次設備」はその役割にふさわしい耐震性を求められる。それが健全な社会通念である。

しかるに、関西電力はこれらの設備を「安全上重要な設備でない」と主張している。このような債務者の主張は理解に苦しむ。

C) 「多重防護」の主張は的外れだ

関西電力は「原発の安全設備は多重防護の考えに基いている」という。しかし、多重防護とは「堅固な第一陣が突破されたとしてもなお第二陣、第三陣が控えている」という備えを指すのである。第一陣の備え(外部電源と主給水)が貧弱なため、いきなり背水の陣となるような備えは、多重防護とは言いがたい。そのような「第一陣軽視」の考えは、多重防護の意義からはずれていると思われる。

このような考えのもとでは、「基準地震動」である700ガル未満の地震においても、冷却機能喪失による炉心損傷に至る危険が認められると言わざるをえない。

3. 小括

日本列島は4つのプレートの境目に位置するという、世界で見ても特異な位置にある。このため、全世界の地震の1割が我が国の国土で発生している。「日本国内に地震の空白地帯は存在しない」と考えなければならない。

関西電力は他の原発敷地と高浜原発との地域差を強調している。しかしその地域差なるものは、それ自体確たるものではない。まして、我が国全体が置かれている上記のような厳然たる事実の前では大きな意味を持たない。

各地に幾たびか激しい地震が到来した。また原発敷地にも、5回にわたり基準地震動を超える地震が到来した。それらが高浜原発には到来しないというのは、根拠に乏しい楽観的見通しにしかすぎない。

その上、基準地震動に満たない地震によっても、冷却機能喪失による重大な事故が生じ得ると考えられる。であれば、高浜原発の危険は、「万が一」というレベルをはるかに超える現実的で切迫した危険であるとみなされる。

4. 「使用済み核燃料」というもう一つの問題

使用済み核燃料は、将来、我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性がある。しかしそれは目下のところ、格納容器(最終処理)のような堅固な施設によって閉じ込められていない。

その理由は「使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには膨大な費用を要する」ということになっている。

そこでは、「国民の安全が何よりも優先されるべきである」との見識は前提とされていない。すなわち、「深刻な事故はめったに起きないだろう」という見通しのもとに、姑息的な対応で済まされているといわざるを得ない。

目下のところ、格納容器に代わるべきものとして使用済み核燃料プールが位置づけられているが、その給水設備も耐震性はBクラスにとどまっている。

5. 当面、守られるべき住民の安全について

A) 安全性確保に必要な方策

本件原発の脆弱性は、

①基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた根本的な耐震工事を実施する、
②外部電源と主給水の双方について、基準地震動に耐えられるように耐震性をSクラスにする、
③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、
④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性をSクラスにする

という各方策がとられることによってしか解消できない。

さらに、地震の際には事態の把握の困難性が予想されることから、使用済み核燃料プールに係る計測装置がSクラスであることが必要である。さらに、中央制御室へ放射性物質が及ぶ危険が予想されることから、耐震性及び放射性物質に対する防御機能が高い免震重要棟の設置が必要である。

B) 原子力規制委員会の新規制基準には合理性がない

しかるに原子力規制委員会が策定した新規制基準は上記のいずれの点についても規制の対象としていない。免震重要棟についてはその設置が予定されてはいるが、猶予期間が設けられている。

地震が人間の計画、意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性がないことは自明である。

原子力規制委員会が設置変更許可をするためには、

①専門技術的な見地からする合理的な審査を経て、申請に係る原子炉施設が新規制基準に適合するか否かを判定しなければならない。
②新規制基準自体も合理的なものでなければならない

C) 新規制基準に求められるべき合理性

最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(いわゆる伊方判決)の趣旨は、当該原子炉施設の周辺住民の生命、身体に重大な危害を及ぼす等の深刻な災害が万が一にも起こらないようにすること。そのため、原発設備の安全性につき十分な審査を行わせることにある。

そうすると、新規制基準に求められるべき合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることである。

しかるに、新規制基準は上記のとおり、緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない。新規制基準は合理性を欠くものである。

そうである以上、その新規制基準に本件原発施設が適合するか否かについて判断するまでもなく債権者らが人格権を侵害される具体的危険性即ち被保全債権の存在が認められる。

6 保全の必要性について

本件原発の事故によって債権者らは取り返しのつかない損害を被るおそれがある。したがって、本案訴訟の結論を待つ余裕はない。

現時点においては、すでに原子力規制委員会の設置変更許可がなされており、現状を保全する(緊急の)必要性も認められる。


を参照されたい。