医者のくせに不勉強で知らなかったが、赤旗の「健康まめ知識」という欄でナルコレプシーのことを知った。

くわみず病院睡眠センターの福原明先生の説明は、簡潔にして要を得ているが、あえて言わせてもらうと、超簡潔である。

少し勉強してみた。

ナルコレプシーというのは日本語では居眠り病ということになるようだが、私などは重症の居眠り病だから、やはり俗称でなくナルコレプシーと言っておいたほうが良いようだ。

というのはこの病気かなりしっかりしたクライテリアがあり、Etiology というか、病態生理もしっかり把握されており、治療法もかなり特異的な方法に絞りこまれているからだ。

しかもその上で遺伝疾患なのか自己免疫疾患なのかという学説上の対立があるという、学問的にはまことに面白い病気なのだ。

と、とりあえず紹介した上で、感想的なものも踏まえて概説しておく。

1.ナルコレプシーはリウマチの親戚

私などが居眠りをするのは年寄りボケのなせる業で、ナルコレプシーなどという由緒正しい病気ではない。

本物のナルコレプシーは、多分リウマチに似た転帰をとって発症するようだ。

扁桃腺が感染して化膿すると、そこで増殖した溶連菌が血液内に侵入してイロイロ悪さをする。

むかしの記憶だと、菌体内の毒素が免疫系を刺激すると、一部の人はこれを自らの身体の一部と勘違いして、自分の体を攻撃し始める。それが心臓につけば弁膜症になり、関節内の粘膜につけば関節炎となる。

この他に、教科書には載っているが見たことがない病気に「小舞踏病」というのがある。手足が不随意運動を起こす病気で、学生の頃たしか8ミリ映画を見せられたが、教室が暗くなった途端、こちらがナルコレプシーを起こしてしまった。

今では小舞踏病のみならず、さまざまな関連疾患が発見され、これらの精神・神経症状を一括して自己免疫性神経・精神障害という。

英語の頭文字でいうとPANDAだ。命名者は多分パンダにしたくて、難しい名前を並べたのだろう。iPSといい、STAPといい、よくあることだ。

疫学的にはかなり頻度が高いようだ。HLA遺伝子との関連が高いようで、体質的なものも関係しているようだ。

これもリウマチとよく似ている。

2.ナルコレプシーは覚醒物質(オレキシン)の欠乏症

覚醒物質というのはオレキシンという一種のホルモンで、視床下部にあるオレキシン細胞で作られる。

先ほどのPANDAで、このオレキシン細胞というのが自己免疫の標的にされてしまうようだ。そうすると脳脊髄液中のオレキシン濃度が低下し、居眠りを引き起こすというのが発症機序のようだ。

死後脳の検討でオレキシン細胞の変性・脱落が確認されている。脳脊髄液のオレキシンA蛋白という誘導体は、発症直後から有意に低下し、カタレプシーを伴うナルコレプシーのケースでは測定限界値以下にまで低下する。

ただ、オレキシンは脳脊髄液中に出てどこかに作用するというのではなく、近傍ホルモンとして同じ視床下部の睡眠中枢および睡眠中枢に作用しているようだ。オレキシンは睡眠中枢を抑制すると言われる。

睡眠の調整: 視床下部前部には腹外側視索前野に睡眠中枢があり、モノアミン性の覚醒中枢がバランスをとっている。

3.夢を見るのがナルコレプシーの特徴

で、どこが普通の居眠りと同じで、どこが違うかというと、

同じなのは30分以内の短い居眠りで目覚めること。

違うのは、短い居眠りなのに、しっかり夢を見るということが最大の違いだ。これは脳波でもREM睡眠として確認できる。

その入眠時の夢は本当に生々しいようで、「閉めたはずの寝室のドアから何者かが入ってくるのを感じる」「体を触られる、押し付けられる」などという。

睡眠麻痺に伴う無動、ありありとした実在感(実体的意識性)、そして強い恐怖感と記載されている。「金縛り」もあるようだ。

あとは笑いすぎた時に腰が抜けていしまうカタレプシーという症状も随伴するそうだが、別になくてもよい。あれば確実である。結構医者は調査票の「あり」にマルをつけたくて、でっち上げる事があるのであまり信用ならない。

4.治療はモディオダールの継続

モディオダールというのは精神刺激薬ということになっているが、どんな薬かわからない。しかし特効薬ということになっているようだ。

オレキシン細胞がやられてしまうわけだから、基本的には治療というより補充療法になる。

問題はオレキシン産生細胞がやがては回復するのかどうかだ。

症状が強い人、悪夢・金縛り・カタレプシーにはアナフラニールという抗うつ剤が奏効するようだ。

あとは適宜さじ加減。


以上が「脳科学辞典」の概要であるが、残念ながらオレキシンについての説明が少ない。

しかしまずは「睡眠」の生理からもう少し検討する必要がある。

いずれにしても君はナルコレプシーではない、指弾きゲームを止めて早く寝なさい。