高齢者の食事摂取をめぐるトラブルは3つある。

一つは基礎疾患の悪化により食欲が低下し食べられなくなる場合である。二つ目はとくに脳神経疾患のために嚥下機能が低下し、誤嚥を繰り返す場合である。そして3つ目が精神的な要因により食事を拒否するようになる場合である。精神的な要因としてはうつ状態が圧倒的だが、離人状態とか説明しにくい状況もある。

それらに応じて対応を迫られるが、長期戦になれば非経口的栄養を考慮しなければならなくなる。

しかし、実はそれらのいずれにも属さないトラブルが結構多いのである。とりあえずここでは「不食」と名付ける。

不食は拒食ではない。拒否はしない。しかし咀嚼もしない。当然ながら嚥下もしない。必ずしもうつではない。精神活動の枯渇した廃人状態でもない。存外受け答えも普通にするし、昨日までと、あるいは1ヶ月前とさしたる変化はない。

検査データ上も、それなりに異常はあるのだが、不食を説明するようなものはない。不食のきっかけもこれといってはっきりしたものはない。

これが丸一日続けば仕方がないから点滴する。そういう状態が2週間から3週間も続くと、老健の手には負えなくなるから、病院へ転出することになる。

だがこれは病気なのだろうか?

むしろ適応ではないのか?

しかし適応だとすれば、何に対してどう適応したのかがわからない。果たして適応になっているのか、むしろ逆に適応離脱になっているのではないか、どうもこの辺は分からない。

現場のナースにこの事を聞いてみても、それなりの理由付けはするが、「奇妙なことだね」という感覚はない。

「分からなければ現場に聞け」というのが私の持論だが、この疑問は「現場に聞いてもわからない」のである。

実は私もこの手は使うことがある。容態が急変してなくなった患者さんの家族が「どうしてこうなったんでしょうか」と聞いてくるとき、「こういうことは高齢者にはよくあることなんです」と答えると、それなりに納得される。

半分納得して、半分合点がいかないという状態の居心地の悪さというのはだれでも経験したことがあるだろう。人はそれを「仕方ない」と言って飲み込むのである。

それが、今回クマの冬眠という話を聞いて、ひょっとしてこれで説明できないかと思うようになった。

そのためには何を調べなければならないのか、何を証明しなければならないのか思案中である。