ということで、シマリスの冬眠というのは大したものだということが分かった。「眠」というより、ほとんど死んでいる。

生物時間としてもほぼ止まっていると考えられる。この話題はSFとしては興味尽きないところだが、今回の主題ではない。

むしろ我々、人間としては熊の冬眠のほうが気になる。高齢者では熊の冬眠に似た環境が形成されているのではないか? ここが知りたいところだ。

結論を先に言ってしまうと、どうも熊の冬眠は冬眠で、普通の活動性低下とは異なる機序があるようだ。


まずは熊の生態 

日本の森とクマ - 環境省 というファイル から(非常に面白いです)

クマは小さな音でも聞き分ける能力(聴覚)、イヌのようにわずかなニオイをかぎわける能力(嗅覚)をそなえた大型動物で、優れた運動能力をもっています。

◎木登り、穴ほりのために強い力と鋭いツメを持っています。

◎人より速く、時速40km以上で走ることができます。

◎水泳も得意で、木に登ることもできます

ということで、本気になったらどうやっても逃げられないことが分かる。

ツキノワグマの食物の9割以上は植物です。春には、芽吹いたブナの葉やさまざま植物を食べます。夏はアリやハチなどの昆虫を多く食べます。秋になると、ドングリなど木の実をたくさん食べるようになります

ほう、そうだったのか。

kumanosinka

 こんな絵も初めて知りました。こんなところにアザラシがいるのか。ハイエナは犬ではなく猫なんだ。


いよいよ本題の冬眠だが、

市瀬史『「人工冬眠」への挑戦』、講談社ブルーバックス、2009

には、要旨下記のように書かれているそうだ。

クマの場合は相対的低体温の状態で越冬するから、心停止の危険はクリアする必要がない。その代わり、ある程度のエネルギー、水、タンパク質、炭水化物などが必要だ。

それらの供給源を、体内に蓄えた脂肪を中心にしたリサイクル体系のなかで確保するというのがクマの基本的戦略だ。

1.水の確保 

脂肪が分解されると最後には二酸化炭素と水になる。いわゆる代謝水というものだ。この水を利用する。

2.ブドウ糖の確保

脳は待ったなしでブドウ糖を欲する。これには脂肪が分解する過程で出来るグリセロールという物質が転用される。

3.タンパク質の確保

タンパク質にはさらに窒素が必要なので、それを尿の中から補給する。

紹介されているのはここまでだ。いくつか決定的な問題が抜けている。熊の冬眠はどういう機序で誘発されるのか、オルタナティブ・パスウェイへのスイッチはどこにあるのか。シマリスにおける冬眠誘発蛋白のようなものは存在するのかなどなどである。

正直、このくらいのこと人間にもできそうだ。事実動物園のクマは冬眠などしないから、遺伝子レベルというより、必要に応じて身につけたラマルク的な「細胞の知恵」に近いものだろう。

ただし、これらの知見はまだ他文献で確認していない。ネット上にはほとんど文献がない。


ここまで読んでの感想だが、冬眠状態を実現するための手段には2つあることが分かった、

一つはドラスティックに非常電源だけに落としてしまう方法、一つは最小限の生命機能は維持しつつ、補給面で工夫をこらすことで生き長らえる方法である。

探せば他にもあるかも知れない。

少なくとも冬眠を一つの特徴や単独のメカニズムで説明するのは困難であり、一つのメカニズムの発動で生じるデメリットを補償するメカニズムが必要となる。そのバランスの上に冬眠が成り立つのだから、ラボに引きこもる前に、もう少し対象そのものの注意深い観察が必要であろう。