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内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  地方分権改革  >  分権クローズアップコーナー  >  分権クローズアップ[有識者へのインタビュー]  >  第1回 西尾勝氏インタビュー


西尾勝さんによるこの20年間の地方分権の議論のまとめである。戦後改革との関連で見れば言いたいことはたくさんあるが、それなりに政府部内での議論の経過はよくまとめられており、説得力もある。地方選挙を間近に控えたいま、学ぶべきことは多い。


地方分権改革の総括

地方分権改革は、1993年の国会による地方分権推進決議から始まった。

それは1980年代以降の行政改革の流れと、1989年のリクルート事件に端を発した政治改革の流れとが合流したものだった。

それ以降の地方分権改革は行政改革の流れに便乗して進められてきた。そこでは政治改革の流れは忘れられがちになった。

地方自治の拡充を目的にした地方分権改革と、行政の減量・効率化を目的にした行政改革とは本来は一致しないものだ。ときには対立し合う側面も持っている。

道州制構想の問題は、地方分権改革と行政改革との矛盾が、衝突する可能性のあるテーマではないか。

地方制度改革の歴史と「所掌事務拡張路線」

戦後の地方制度改革はシャープ勧告・神戸勧告に始まった。その後、

1.国・都道府県・市町村の間の事務配分及び税財源配分の見直し

2.事務移譲の「受け皿」を再編成すべく、町村の合併あるいは特別市制の実現などが図られた。

3.その延長線上に、道州制の実現が繰り返し論じられ続けた。

総じていえば地方公共団体が所掌する事務を拡張していこうとする「所掌事務拡張路線」が一貫していた。

いわゆる「第一次分権改革」

93年に地方分権推進委員会が最初に設置された。

この委員会では、自由度拡充路線に属する改革を基調とし、事務の配分はそれほど大きく変えないで、裁量の余地、自由度をできるだけ広げようとした。

その結果、住民自治の側面の拡充よりは団体自治の側面の拡充に偏り、所掌事務拡張路線よりは自由度拡充路線に偏る結果となった。多くの課題が未完のままに残された。

「第一次分権改革」で将来に残された課題

地方分権推進委員会は2001年に最終報告を出して解散した。ここで上げられた課題は以下の6項目である。

1.地方税財源の充実確保。

2.法令等よる義務付け・枠付けの緩和。

3.事務権限の移譲。

4.地方自治制度の再編成。

5.住民自治の拡充

(6.は書かれていない)

このうちの1と2は、「自由度拡充路線」に属するものであり、3と4は「所掌事務拡張路線」に属するものである。

いわゆる「三位一体の改革」

「第一次分権改革」のあと、、いわゆる「三位一体の改革」が始まった。これは小泉内閣が政治主導で進めたものだった。それは自由度拡充路線の実現を目指すものだった。

2006年に地方分権改革推進委員会が設置された。それは地方分権推進委員会の最終報告の「1.地方税財源の充実確保」を念頭に置きつつ、「2.法令等よる義務付け・枠付けの緩和」に進もうとした。

しかし、残念ながら、所期の意図に反する結果になって挫折したと言わざるを得ません。

「歳出歳入一体改革」から道州制論へ

この「三位一体の改革」はまもなく挫折した。その後、小泉内閣の末期の経済財政諮問会議が「歳出歳入一体改革」を掲げ、その方策として国の出先機関の原則廃止という方針を打ち出した。

続く第1次安倍内閣では、道州制ビジョン懇談会が打ち出された。

要するに、国の側も地方公共団体の側も、急速に所掌事務拡張路線に舵を切り始めた。

(議論が荒廃し始めた。地方税財源の充実確保、あるいは住民自治の拡充という共通のプラットフォームは失われた)

全国知事会は、国から都道府県に、または広域連合なりへ事務移譲を進めるよう強く要請し始めた。指定都市市長会は、指定都市を都道府県から独立させる「特別自治市構想」の実現を要請するようになった。

「所掌事務拡張路線」への批判

所掌事務拡張路線は、国と地方公共団体の間の激しい意見対立を生まざるを得ない。さらに地方公共団体の間でも、都道府県と市区町村の間の意見対立が先鋭化せざるを得ない性質を持っている。

それだけに、所掌事務に関する議論は殊更に慎重かつ綿密な検討が求められる。

全国知事会は「出先機関の原則廃止」や「丸ごと移管」を唱えるが、いささか議論が乱暴になっており、もう少しきめ細かい詰めが必要ではないか。

特別市構想や都制構想、道州制構想は戦前から繰り返し浮上しては消えてきた。それは素朴な着想の域を出ていない。

あらゆる懸案事項を一挙に解決できるといった万能薬のような制度改革構想など存在しない。そのことをまず確認すべきではないか。

地方税財源の充実確保こそが最優先課題

依然として、「残された課題」のうちの最優先課題は、地方税財源の充実確保である。

財政再建の過程で、いかにしてこれを実現していくのかは大変難しい問題だ。にもかかわらず、最重要課題であることもまちがいない。

消費税の増税という過程で行うことは既にもう無理になっていると思う。将来どのように変えるべきかを、今から双方が検討しておくべきだろう。