紙智子さんが全中問題について語っている。
2つのねらいがある。一つはTPPを巡って「お上に楯突く奴は許さない」という逆上的発想だ。これを見た業界団体は震え上がるだろう。産業報国会の復活への第一歩だ.
もう一つは、以前からの、とりわけアメリカ筋からの要求だろうが、岩盤規制の打破だ。ずるい奴は安倍の感情激発を見て「待ってました」とばかりに話を持ちだしたのだろう。
まぁ傍から見ていてもひでぇなと思う
農協といえば保守の岩盤だった。自民党にとっては糟糠の妻のようなもので、どんな苦境にあっても最後は救ってくれた恩ある組織だ。霞ヶ関の方針を農村に広げる装置としても機能してきた。
しかしいまは見る影もなくやせ細ってしまった。それでも操を尽くしている。安倍首相にこそ反感を抱いても、自民党への忠誠は微塵も揺らいでいない。
紙さんは、長いこと農政畑をやってきた人だから、農民への思いが農協への態度に出てくるのだろうが、正直、農協が自民党の集票マシーンとして政治の革新を妨げてきたことも間違いない。
そういう農協を切って捨てようというのだ。櫻井よしこは農協を「寄生虫」と罵倒している。しかもその後ろには、切って捨てた死体を切り刻んで食ってしまおうというハイエナまがいの連中がうごめいている。

独禁法の乱用ではないか
ただ、一歩退いたところから紙さんの意見を聞いていると、国民全体に関わらざるをえない最大の問題は、独占禁止法の恣意的適用にあるのではないかという気がする。
人を殺すのはいけないが、違法な手段で殺すのは、もっといけない。それは経済民主主義という国の制度の根幹にかかわる。
独占禁止法そのものの是非について言っているのではない。これまでさんざん政府が風穴を開けてきたことについて言っているのでもない。
いまある法律は法の目的を踏まえて厳密に運用しなければならないのである。
農協がいかなる組織なのかもここでは問わない。そもそも協同組合がどのような理念を持ち、どのような法的枠組みのなかで活動しているのかも、ここでは問わない。
ただ現在の農協と全中の活動が経営体的な側面を持っていることは間違いない。そこにしほって、一経営体として全中を見てみよう。
農協は経済強者なのか
はたしてそれは独占禁止法の対象となるのか。問題は資産の額とかシェアーとかではない。そこに独占禁止法で禁止されているような不正があるかどうかだ。
たしかに農協は政治的には時の権力となあなあの関係を保つなかで、政治的には影響力を発揮してきた。しかし独占大資本のような経済的な強者とはいえない。
そしてもうひとつは、現在すでに合法化されている持株会社の活動の規制枠に比べ、違法性が高いか(売買に強制が伴っているか、不当に利益率が高いか)どうかだ。ここが法に照らしあわして厳密に適用されないと、恣意的適用というしかなくなる。
ことは農協にとどまらない
当然生協もかかわってくる。独禁法適用が共同購入を狙い撃ちしているからだ
日刊ゲンダイには次のような意見が掲載されている。
独禁法は消費者保護の観点から、不当な取引制限や不公正な取引を禁じた法律ですが、相互扶助のための『組合』は 除外しています。農協も経済弱者の農家を守るために農協法で規定されている。仮に農協に独禁法が適用されれば、農薬や肥料、農機具など、共同購入している 資材について価格交渉権を失う。経済事業は成り立たなくなり、農協は壊滅的な影響を受けるでしょう
今のところ、独禁法の適用(適用除外の廃止)はそれ自体が目的ではなく、脅しの手段として使われている。ヤクザの脅しで「いうこと聞かないと、可愛い娘が泣きを見ることになるぜ」というセリフである。
こういう脅しがまかり通ることになれば、生協や民医連など共同購入を進める自主的組織は、すべて脅しの対象になる。