「原油安の構図 下」はだいぶ話が生臭くなってきて、数字よりも具体例が増えてくる。その分話は少し散漫だが、迫力はある。
おおまかに言って話は4つあるように思える。
1.OPEC諸国はこのまま突き進むのか
2.米国のシェールオイルはどうなるだろうか
3.高コスト国は持ちこたえられるだろうか
4.低価格はどういう形で終焉していくのだろうか
さすがの石油アナリストでもこれには答えきれないだろう。かなり競馬の「予想」みたいな側面もふくみつつ、話が展開される。
1.OPEC諸国はこのまま突き進むのか
OPEC、とくに中東諸国はこのまま突き進むだろう。やれるという可能性と、やらなければならないという必要性がある。
まず可能性。
中東の陸上油田は平均29ドル/バレル。したがって、現在の価格は「どんと来い」という余裕のレベル。もっと下げる覚悟もあるだろう。
必要性
84年の「逆オイルショック」のとき、サウジは1国のみで減産を行った。それまで1千万バレルだったのを250万バレルまで減らした。しかし価格の低下は食い止められず、逆に財政破綻寸前にまで陥った。
今回それは繰り返せない。サウジが減産しなければ、他のOPEC諸国が束になってもサウジにはかなわない。販売シェアーの減少をもたらすだけだ。
ということで、サウジと一蓮托生だ。
2.米国のシェールオイルはどうなるだろうか
シェールオイルが増えた分が生産過剰になっている。だからシェールが潰れれば需給は元に戻る。
では潰れる可能性はあるか。
石油アナリストの萩村さんは「ない」と答えている。
シェールオイルのコストは1バレル40ドル程度で、それを切るところもある。
これらは頑張れる。
新規参入のプロジェクトでは80ドル近いコストのところもある。ここは持たない可能性がある。しかしこれらがなくなっても、供給過剰のさらなる深刻化が止まるだけで、供給過剰はなくならない。
3.高コスト国は持ちこたえられるだろうか
ではババを引くのは誰か。
それは高コスト産油国だろう。
萩村さんが挙げるのはロシア、ベネズエラ、北海油田、アフリカ西海岸の新興産油国である。
4.低価格はどういう形で終焉していくのだろうか
まずこれらの国で深刻な経済危機が生じるであろう。この内、ロシアの危機が重要で、多面的な影響をもたらすであろう。
高コスト油田、新興油田、新規参入のシェールオイルが生き残り競争の犠牲者となる。
この時点で需給バランスは回復するが、市場の二重構造が問題となる。
米国がシェールオイル輸出を禁止したままであれば、米国での需給バランスは回復しても、米国以外の輸入国にとっては深刻な石油不足が出現するかもしれない。
と、まあ、こんなところか。
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