ということで、ALPSには実施上のさまざまな問題があって汚染水処理がうまく行っていないということは分かった。

しかしALPSは本質的に役に立たないという学者もいるようだ。

東洋経済オンラインの2013年10月22日の記事

東電・東芝の「ALPS」は、役に立たない

東工大・冨安名誉教授に汚染水処理の対案を聞く

というものだ。冨安さんは、東工大で原子炉工学研究所教授を務めた専門家。

汚染水というのは正確に言うと処理対象水(RO濃縮塩水)というのだそうだ。

この中にはストロンチウム90が1リットルあたり1600万ベクレルふくまれている。他の各種に比し圧倒的な比率だ。

ALPSの欠陥

東電は現状の技術では除去が困難なトリチウムを除く62の放射性核種を、ALPSを用いて規制値以下に減らすとしている。

しかし、富安さんによればALPSによる処理はコスト的に無駄であるだけでなく、危険だ。

なぜ無駄か?

ストロンチウムと比べて相対的に微量で、危険性の少ない核種も高いコストと手間ひまをかけて基準値以下に減らそうとしている。そのためにALPSは設備が大がかりになった一方で、最も重要なストロンチウム除去のための工程が合理的に設計されていない。

なぜそのようなことをしたのか。東電はALPS処理済み水の海洋投棄を想定しているからだ。

なぜ危険か?

ストロンチウムの吸着タワーは、チタン酸塩を吸着材としている。チタン酸塩は過度にストロンチウムを吸着した場合、放射線化学反応を起こす。

このときベータ線が水に照射して水素を発生し、これによる水素爆発のおそれがある。

発想が間違っている

第一に考えるべきは、海洋投棄を前提とせず、できるだけリスクが少ない形で汚染水を溜め続ける方法に切り替えることだ。

この後、富安さん独自の処理法が展開されているが、コメントできる立場にはない。

いずれにせよ、前の記事で私の感じた素朴な疑問が裏打ちされたような気がする。

肝心なのはストラテジーで、これは4段階に分ける必要がある。

一次除染: セシウムの除去をふくむ前処理

二次除染: ストロンチウムの除去

三次除染: ストロンチウム以外の61種の核種の除去

四次除染: トリチウムの除去

ALPSは二次と三次を一度にすまそうということだが、そのために技術的困難が生じている。

これはある意味で簡単なことで、「四次除染を行わない限り、海上投棄は認めない」という態度を示せば済む話である。

トリチウムが十分に比重が重ければ、やがて海底深く沈殿することになるだろうから、海洋投棄はありえない話ではない。

しかし沈まずに漂い続けるのなら、てんでアウトだ。善悪・可否の判断以前に漂着地である米国の世論が黙ってはいないだろう。

アメリカがダメと言って、それを日本は押しきれるだろうか? ありえない話である。