土曜日の赤旗一面トップは、かなり恐ろしげな見出しである。
「汚染水コントロール不能」
ただ縦見出しは「東電、年度内処理を断念」とあって、両者を総合すると、“未だにコントロールが未達成”だということのようだ。
中核となる事実は、東電の社長が次のような事態を公式に明らかにしたことだ。すなわち、
1.東電は安部首相に対し、放射能汚染水を3月末までに全量処理すると約束した。(2013年3月)
2.目標達成は不可能であり、断念する。
ということだ。ただし汚染水処理そのものは進んでおり、予定量の半分程度は処理済みである。
ということで、見出しは、ややセンセーショナルに過ぎる感もある。
福島原発の廃炉にとって最大の課題が汚染水処理だ。いまそれが最大の難関を通過しているということなのかもしれない。東電に好意的に見れば。
そこでネットから情報を集めてみた。
ALPSとはなにか
汚染水処理はどのようになされるのか。その中核となるのがALPS(多核種除去設備)という装置らしい。
そしてALPSの不具合が多々あって、それが処理の遅れに繋がっているらしい。東電側はそう説明している。
そこでALPSだが、ちょっとだけ記事を深読みしてみた というブログの
2013-09-14 福島原発 ALPS トリチウム
で要領よく説明してくれているので紹介する。
まずALPSの名前は、Advanced(高度な)Liquid(液体の)Processing(処理)System(装置)の頭文字なのだそうだ。
この図のごとく、16個のタワーが立って、その中を通過していくあいだに62種類の放射性物質が除去されるというもの。
処理能力は1日500トンとされているので、結構なものだ。まぁ1年もあれば処理は完了する計算だ。
この後、このブログではトリチウムの危険が訴えられているが、それはうまく行ってから発生する話。
そもそもALPSが回っていないところに問題がある。
なぜALPSが回らないのか
以下は IWJ Independent Web Journal というサイト
2015/01/26 予定していた年度内の汚染水全量処理は断念、新たな目標日程は検討中~東電定例記者会見
という記事からの引用。
ALPSの稼働率が想定通りに上がらない。特にストロンチウムを除去する吸着剤の性能低下が当初想定より早い。また前処理が悪く、処理前の水にカルシウムや不純物が多く含まれている。このため、頻繁に運転を止め、クロスフローフィルターの逆洗洗浄を行う必要がある。
ということで、除去装置はすでに第一、第二、第三世代と投入されているが、能書き通りの稼働には至っていない、ということのようである。
私は考えるのだが、ストロンチウム除去プロセスがLimitting Step になっているのなら、新型施設の設計時にどうしてそこを強化しなかったのかがわからない。場合によってはストロンチウム単独の処理施設を作ったほうが安上がりではないだろうか。
遅れている理由は他にもある
今月に入って、作業者の死亡事故が続いて起きた。このため21日以降、全ての工事作業が中断されている。総点検の結果、相当安全設備の不備がひどいこと分かった。このため操業停止期間はさらに長引く可能性がある。
問題は汚染水処理だけではない。海水配管トレンチの充填止水工事、凍土遮水壁もとまっている。
と、とりあえずこんなところか。
変な話だが、致命的なコントロール不能=失速・きりもみ状態に入っているわけではないことが確認できて、ひと安心した。
しかし、どこか一段落しないことには、原発再稼働はムリだろうね。
こういう状況が世界に知られたら、安部首相は大嘘をついたということで、オリンピックを返上しなければならなくなるかも知れない。
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