鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

AALA関連記事は「aala_newsの編集日記」http://blog.livedoor.jp/aala_news/ に移りました(6Nov.2023) 中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 「ラテンアメリカの政治」(http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ )がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

2020年06月

新型コロナ 各国比較は超過死亡が正確

感染者数は到底各国比較の対象にはならない
我が国のように、なんの理由か知らないが、検査をさせないために調査の何倍もの労力を割いた国もある。
なにせ原発事故のときもホ。甲状腺ホルモン検査させなかった国だから、コロナごときではびくともしないようだ。

貧困国ではそもそも検査セットさえ入手困難だろうから、当然、日本と同じように感染者は低く出る。

だから死者数で比較するのが良いと考えていたが、実はこれもかなりばらつきが出るようだ。

白状するが、私もむかしは何でも心不全だった。事故死や自殺でもない限り、最後は心臓が止まって人間は死ぬのだから、みんな心不全である。

むかしは人聞きが悪いと言ってガンを病名にするのを嫌ったものだ。なんせ本人に病名を告知しないのだから、ある意味自然の流れであった。

こういう風習は、伝染病ではもっと強いものがある。だから結核で死んでも死因は肺炎である。「何が悪い、心不全よりよほどまともな病名だろう」という具合だ。

これをうんとマクロに見てしまおうというのが超過死者数だ。

もちろんこれは理論上非コロナ死を含んでしまう。特に医療機関の受給が逼迫してくると、皺寄せ死や、関連死が乗ってくるからだ。

だがコロナ関連死も乗せることは決して悪いことではないだろう。

そこを指摘したのがBBCの「“超過死亡”という数え方は役に立つ」というニュース解説。


それでBBCが同一の方法で各国の超過死者数を調べた。

日本(3月)

日本の超過死者数は平年より 0.3% 高く、平年より 400 人が多く死亡した。

いっぽう政府発表による同時期のCOVID-19死者数は51人に過ぎない。超過死者数の8分の1だ。

ということはこれまでの公式死者数約千名とされているのは、超過死者数では8千人ほどになると予想される。

これを人口で割れば超過死亡率が出てくることになるが、世界水準に比うと、やはり間違いなく低いようだ。どう見ても非の打ち所のない、「世界の神秘」である(何も政府はしなかったのに)


米国(2月16日 - 5月02日)

大流行の前半分だけを切り取った形になっている。死者数は平年より 97300 人が多く死亡した。死亡率は平年より 16% 高かった。

政府の死者発表は7万266人でありかなり高率に捕捉されていると見られる。

分母が違うので比較は難しいが、超過死亡率は少なくとも日本の10倍を超えることは間違いない。


イギリス(3月07日 - 6月05日)

ほぼ全期間をカバーしていると思われる。

死者数は平年より 64500 人が多く死亡した。死亡率は平年より 43% 高かった。

政府の死者発表は51804人でありかなり高率に捕捉されている。

イギリスの人口は日本の3分の2,6千6百万人ほどであるから、単純計算で超過死亡率は日本の230倍ほどに達する。

まことに凄まじい数である。


韓国(2月01日 - 3月30日)

何かと比較されることが多いが、この期間に年より 2400 人が多く死亡している。これは平年に比し5%多い超過死者数である。

これに対し政府発表によるコロナ死者数は163人にとどまる。日本の3倍だ(期間は異なるが)

見事に日本と同様の文化習慣が認められる。しかもはるかに強力だ。日本で死因が公開されたのが8人に一人だが、韓国では15人に1人という計算になる。

東洋と西洋の死者数はまったく比較の意味がないことが分かる。これなら感染者数の比較のほうがまだマシだ。もし強引に比較しようとすれば、東洋諸国の死者数に10~15倍をかけた数字を念頭に置く必要がある。

これは統計学というより比較文明論の問題だ。とはいえ、東洋人が(平然と)ウソをついているのは間違いないので、決して良いことではない。できるだけ科学的に厳密な数字を出すようにしなければならない。

以下は省略。本文を参照されたい。

どうも最近のアメリカのニュースを見ていると、現実感にかけているように見えてならない。

いまアメリカでもっとも深刻で国民の関心が集中している問題は、他ならぬ新型コロナである。そしてそれが恐ろしい速度で全土に拡大しつつあることなのである。

だからトランプは破れかぶれになって「中国が悪い」と騒ぎ立て、とにかく自分以外の誰かが悪いと見苦しいざまを見せているのだ。

我々は米国における新型コロナのパンデミックがいかに凄まじい状況になっているのかを、実感として知っておく必要があるだろう。

以下「赤旗」などより引用


1.新型コロナの全般的状況

米国では感染者230万人、死者12万人を出してきた。

現在では50州すべてで外出制限が緩和されている。厳しいロックダウンがなくなり日常が戻りつつある。

しかしいくつかの州では、新型コロナウィルスの感染者数が大幅に増加している。つまり封鎖解除は明らかに時期尚早なのだ。

6月19日には、アメリカ国内の1日当たりの新型コロナ感染者が3万人をこえた。これは4月下旬以来の最悪の数字である。

感染者急増の背景には検査の拡充もあるが、顕性者の増加が主因であることは明らかだ。ICUの病床が不足している州も出現している。

NBCの番組で、ある専門家は新型コロナウイルスについてこう語った。

新型コロナは山火事に近いものだ。夏にかけて、あるいは秋に入っても感染が収まらず、第1波、第2波、第3波と分かれるのではなく連続的に全米を襲うのではないか

コロナ 米国地域別



2.ニューヨークの次はフロリダだ

南部と西部での拡大が顕著で、8つの州で、1日当たりの感染者数の1週間平均が過去最多を記録した。

フロリダでは18日、新たに3207人の新型コロナ感染者が登録された。さらに22日には、感染者総数が10万人を突破した。

研究者のモデルを基にした予測では、

フロリダ州はコロナ感染の次の中心地となるだろう。感染規模は「過去最悪」になる恐れがある。

とされる。ある医師はCNNに対しこう語った。
入院患者もタンパからオーランド、マイアミデード郡に至る各地域で増えている。
これが倍増し始め、制御不能になっても全く不思議ではない
これに対し各州の指導者は、感染者数増は検査の拡大のせいだとすぐ分かる嘘をつく。(陽性率もしっかり上がっている)

連邦政府の責任者ペンス副大統領は「50州中、半数以上で新規感染者は減少しており、われわれは見えない敵とのたたかいで勝利している」と強弁した。

フロリダ州知事は、移民世帯の過密な住環境が増加の一因だなどと、逃げ口上を繰り返している。

フロリダだけではない。テキサスでは1日あたり新規発生が4135人、アリゾナで3465人に達している。

トランプは23日の選挙集会で、我々は戦闘に勝利した。武漢風邪(新型コロナの感染症)は消えつつあると嘘をついた。


3.対策センターの評価と対応

アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士らは議会で発言し、感染者の急増は憂慮すべきサインであると発言。今後数週間の対策が重要になるとした。


若者の無症候感染が増えている

特に若者の間での感染拡大が著明で、テキサス州では30歳未満の若年層が新規感染者の過半数を占めるようになった。検査件数が増えただけではなく、陽性率も上がっている。

若者は大半が無症状で、治療を必要としない。そのため対策を無視し、ウィルスを撒き散らしている可能性がある。

一般米国民の無知は相当のもので、たとえば国民の23%が、新型コロナウイルスは意図的に作り出されたと考えている。
愚や愚や、汝をいかにせん!


4.トランプは最強の支持基盤を危機に追いやった

今後南西部の感染拡大がどうなるかは見当がつかない。感染者数は加速度的に拡大し、そのスピードに鈍化は見られていない。
基本的にまだ住民の間に危機感が見られていないと考えざるを得ない。
コロナ 米国とEU
フロリダとテキサスはトランプの、というより共和党と草の根保守勢力の本拠地だ。ここの地域で感染が広がり医療崩壊が起こりロックダウンが広がれば、保守派の動きは止まる。一度止まった動きは大統領選挙を超えて不活化状態が続くだろう。
中西部のラストベルトの選挙民だけでは到底必要な票を集めることは出来ないだろう。そもそもラストベルトの退職者たちが忠実なトランプの支持者とも思えない。

我々は、ポストコロナの時代を、そろそろトランプ抜きで考えるべき季節に入ったのかもしれない。

新型コロナ ゲノム解析でわかったこと

日経新聞日曜版にスレヴィン大浜華記者の署名記事として掲載された。

やや入り組んでいて読みにくいが、主だった中身を列挙する。

1.進む新型コロナのゲノム解析

遺伝情報の変化を遡ることで、系統樹を作っていく作業だ。

これでアダムとイブの発生時期が特定できる。

これまでの結果は予想よりさかのぼるようだ。それだけでなく衝撃的なのは、武漢で最初の患者が確認される前に、人から人への継続的感染が起きていた確率が高いことである。


2.ヒトコロナ感染者は武漢1号患者より数代さかのぼる可能性

武漢で発端者が発見されたのは12月8日。その発端者を遡ることは出来ていないが、武漢以外の可能性はある。

おそらくは夏の終わり頃に、コウモリに常駐する新型コロナが人へ、そして人から人への伝播を繰り返した後に、武漢で感染爆発したのだろう。


3.新型コロナは武漢から広がったのではないかもしれない

武漢で感染爆発に至ったのは12月中旬から下旬であったが、その時点ではすでに広東省などで少なくない新型コロナの発生とヒトーヒト感染が見られており、むしろ武漢以外の地が発生源にあった可能性を示唆する。

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武漢の食肉市場からの発生の可能性は、むしろ低いと言わなければならない。現在中国当局は武漢の市場を発生源とする見解を取り消しており、WHOも白紙に戻して検討するよう促している。

欧米の感染も思ったより早かったのではないかとの報告が相次ぐ。

フランスで12月下旬にインフルエンザ類似の症状で入院した40代男性の検体を、4月に改めてPCR検査したところ、新型コロナが検出された。

これはヨーロッパでのコロナ感染が、武漢での感染と並行、あるいはひょっとすると先行していた可能性を示唆する。

米国のCDC(疾病対策センター)も、早ければ1月中旬には感染拡大が始まった可能性があると報告している。

4.現時点での結論

新型コロナの発生源が中国であることは間違いない。新型コロナが、もともとコウモリに起源を持つこともほぼ確実である。

これが直接、あるいは他の動物を介してヒトに感染し、さらにヒトーヒト感染が起こり始めたのは去年の秋だった。

最初の感染拡大は武漢より南の地方であったが、それは大流行にはならなかった。

それらの新型コロナの一部が武漢市に入りパンデミックに発展した。残りはほぼ同時期に西方へも拡散し、その先端はすでにヨーロッパにまで達していた。それはさらに大西洋を渡り、1月中旬には米国内での拡大を開始していった。

* ウィルスの人工作成説、武漢のウィルス研究所の拡散説、武漢の市場発生説はこれらの研究によりすべて否定された。確実なのはコウモリ起源説、確実と思われるのは中国南西部のどこかで発生という説である。

スレヴィン大浜華さんの丹念な文献検索に敬意を評します。



NHKの「ニュースの焦点」みたいな番組に佐橋亮さんという方が出られて、なかなか明快な分析をされていた。
文章を探したところ、“nippon.com”というサイトに佐橋さんと川島さんという二人の対談が載っているのを見つけた。
ともに東大の先生で、佐橋さんは米国から、川島さんは中国側から米中問題を研究されているようだ。

ポストコロナの世界 米中対立激化の行方を読む

1.「折り合う余地」がない関係に

米中関係は「大きな転機」にある。

17年末に国家安全保障戦略が出て「中国との競争」が打ち出された。18年3月には中国に対する関税の付与が始まった。

そして決定的な方針転換となったのが、8月に出来たいわゆる「マケイン法」だ。これにより輸出管理・投資規制の枠組みが出来た。

10月には、ペンス副大統領の「対中強硬論」演説があった。

この17年から18年にかけての流れは「米国の覇権維持」という戦略目標に乗った政策化だということができる。

それは19年も続いていくのだが、20年3月にそれは一つの画期を迎える。米中対立はイデオロギー的なものにまで深化した。

経済、安保、技術競争などの政策対決に覆いかぶさるように、イデオロギー対立が対中政策を支配するようになった。

この動きの中で、トランプだけではなく議会右派の動きが無視できず、民主党議員の一部をも巻き込むものになっている。


2.覇権維持戦略はそのまま、イデオロギー対立で補強する

貿易摩擦の問題では両国は「取り引き」できる余地がある。貿易協議で第1段階の合意が出来上ったのもこのためだ。

イデオロギー対立は覇権維持戦略に取って代わるのではない。

それは戦略的競争相手(strategic competitor)との闘いをさらにアピールできる素地を形成している。

政治的な推進力というのはワシントンを越えてはそうそう進まない。戦略的な話にイデオロギー対立をうまく噛ませると、国家的な行動へと進んでいく。

米国が「共産党たたき」を前面に出してきたので、中国としては「折り合う余地」が全くなくなってしまった。これは冷戦と同じ構造だ。

ただし「新冷戦」という言葉は、定義があいまいなところがある。このため、米国ではこの言葉を使わない専門家も多い。


3.逃げ場が狭まった中国

19年までの段階では、中国は「新型大国関係」を掲げていた。米国との間に「交渉の余地はある」と考えていたと思う。

ところが20年になって、米国があまりに強硬になって逃げ道がなくなった。

4月中旬からは公的な場で堂々と米国を批判するようになった。言葉だけではなく、東シナ海、南シナ海における公船の行動なども変わってきた。

問題がこじれたのは中国側にも責任がある。

これまで、中国は米中間の力関係を変えようとじわじわと手を打ってきた。

17年には「2049年には米国に追いつく」と宣言し、海底ケーブルやGPS衛星システムなどの開発にも成功している。

ただそれは「30年計画」であり、露骨なものでも性急なものでもなかった。

今回の対決姿勢の強化は、「米国の強硬姿勢、本格的な攻勢に対応する、中国の弱点をふさぐための防衛的な措置」ととらえることもできる。

いまの中国は経済的に非常に苦しい。国内の経済や就業対策にお金を使わなければならず、対外活動に資金を流す余裕はない。「身を引き締めて、米国の攻勢に耐える」というのが本音だろう。

4.さらに攻勢を強める米国

中国の対抗姿勢の公然化に対し、米国はさらに攻撃のトーンを高めている。

5月にはトランプ大統領が「対中関係を完全に断ち切ることができる」と発言した。ポッティンジャー大統領補佐官は、中国人(華人圏を念頭に置いた)に「立ち上がれ」と呼びかける演説を行っている。

その中で新版マケイン法ともいうべき「中華人民共和国への戦略的アプローチ」という文書が発表され、これに基づくファーウェイ(華為技術)に対する追加措置も実施された。

トランプ政権は、対中対立をいわば政治運動化してきた。この流れがどこまで続くのかはよくわからない。


後半は、今後のバイデンや習近平の話も絡んで、ペナント争いの予想みたいなところがあるので省略する。両者のニュアンスの違いもかなり著名になってくる。
ただ二人は、トランプがもし勝利したとしても、これまでの延長線上で対立を強めるのはかなり厳しいとみている。
貿易戦争が復活すれば、米国の同盟国の間でも、トランプ流の対中アプローチに付いていくことが難しい国が多くでてくるであろう。
ちょっと川島さんの提起がフォーマルなので議論がかみ合わないところがある。できれば佐橋さんの所論をもう少しじっくりと聞きたい感じがする。



口を酸っぱくしていうが今日の世界における主要な対立点は、すべての人々の命を守ろうとする勢力、そのために団結して行動しようとする人々か、産業のために危険を無視する人々、資源をひたすら退蔵し致富にすべての情熱を捧げる富裕層とのの対立である。
選挙勝利のために、病気への一致した取り組みを壊すことをなんとも思わない人も、その一味である。
米中対立が底流にないとは言わない。しかしいまことさらに対立を煽り、郵便ポストが赤いのまで人のせいにする人々は、政治の表舞台から一刻も早く立ち去るべきだ。

6月22日 日本経済新聞
中村亮「米軍トップ、辞任よぎった夜 『親トランプ』の苦悩」

がとても面白い。見てきたような話ではあるが…

6月1日、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、合衆国憲法修正第1条は「表現の自由」を盾に、デモ鎮圧のために米軍動員を求めるトランプ大統領に激しく抵抗した。

激論の末、ひとまず軍動員の回避に成功したが、警官隊がデモ隊を強制排除したあとに、ミリー議長は戦闘服姿でトランプに随行するハメになった。

ミリー

その日の夜、ミリー議長はメディアやネットで、自らの行動が「軍による政治介入」などと集中砲火を浴びるのを目のあたりにした。

批判者の中にはマティス前国防長官などの米軍OBもいた。ミリー議長は周辺に辞任の是非を相談するまでになった。

息をさせて
    ベネズエラ制作のポスター(We hope というのが良い)

話は10日後に飛ぶ。

6月11日、ミリー議長は国防大学の卒業生に向けた祝辞で、「私はあの場にいるべきではなかった」と述べた。

それはホワイトハウス前で軍服を着てトランプ氏に随行したことをさしている。

さらにミリー議長は「みなさんもこの誤りから学んでほしいと私は切に願っている」と言葉を続けた。

しかし、話はこれでおしまいだ。
辞任もしなければ、トランプと決別もしていない。トランプは慰留に入っている。
周辺情報によれば、ミリーはトランプ派の高級将校として軍に送り込まれたらしい。その結果、かなりの特進を経て現職についたようだ。
勘ぐれば、あんな写真がでかでかと出て、軍の反人権派のトップとして扱われたことに対するエクスキューズかとも取れる。
だから、問題はミリーの良心ではなく、統合参謀本部議長さえ一夜にして辞任間近に追い込むほどの民衆の圧力なのだ。
そしてコロナさへなければこれほどにはならなかったろうという、両者の社会心理学的な連結について思いを致すことだ。


12時間 眠るの記

起きてすでに1時間半、頭は依然ボーっとしてる。ボーっとしているというのは、頭の中にボーっという音が流れていることだ。

理由はおそらくリリカのせいだ。


おばさんを30時間も寝かせるの記

むかし30年も前、訴えが多く興奮気味の初老のおばさんを入院させたことがある。

とりあえず、トリプタノール10ミリを飲ませて寝かせつけたのだが、これが寝ること寝ること、24時間立っても目が覚めない。

流石に心配になって精神科の医師に相談したが、「バイタルが安定しているなら、そのまま、起きるまで寝かせときなさい」というつれない返事。
おかげでその日は病院泊まりで様子を見るハメになった。

夜の10時ころ、ナースから「目が覚めました」との連絡。急いで駆けつける。

延々30時間、ひたすら寝続けたことになる。尿失禁なし。まだ寝ぼけてはいるが、外来を受診したときとはうって変わって落ち着いた症状。

ただ話を聞くとどこか変だ。入院する前、あれだけ喋り続け訴え続けていたのが、借りてきた猫さながらにニコニコと、すっかりおとなしくなっている。

記憶もなくなっているわけではないが曖昧だ。とくに激しく訴えていた行動そのものに対する記憶が曖昧だ。

結局、そのおばさんはそのまま落ち着いた状態に戻り、現状を受容しそのまま退院となった。その後の外来での精査も異常なく、トリプタノールも使うことなく経過した。

原因は爺さんの金遣いが荒くなり、家計に支障をきたしたことだったと記憶している。それ以上の詮索はしなかった。

トリプタノールについて

トリプタノールというくすりは、難しくいうと三環系の抗うつ剤で、うつ病ないしうつ状態に使うくすりである。いまだに現役ではあるが、古典的なくすりで、副作用もふくめ究明され尽くしたくすりである。

ただ、私が勉強し尽くしたかと言われると、かなり心もとないところもある。

ただこれは睡眠薬ではなく、普通に使っても人によって多少眠くなる程度のものだ。

私はこのときの結果から、睡眠に入るにはいくつかのかぎ穴があるのだなと思うようになった。ベンザリンやレンドルミンのようないわゆる睡眠薬は、万人に効く睡眠薬であるが、人間には個別に秘密のかぎ穴があって、トリプタノールが選択的にすごく効いてしまうような受容体があるのだろうということである。

「トリプタノール受容体の活性化」仮説

これから先はただの空論であるが、それがある種の人間に特殊なものなのか、つまりDNAに規定されたものなのか、それともある特定の環境に置かれた際に誰にでも出現するものなのか、という選択である。

それが、この度、12時間の連続睡眠をもって一つの結論に達した。トリプタノールによる過剰睡眠現象は人間にとって普遍的なものである。

異なるのは前提となる精神状態であり、うつないし類うつ的な状態のときに、このかぎ穴が開くということである。

話が長くなったので、一旦話を終わる。今日も外来だ。

パソナと聞いて、「あれっ」と思ったのは私だけだろうか。
あの酒池肉林の仁風林、政界スキャンダルの真っ只中に登場したあの仁風林ではないか。社長が創価学会で会長が竹中平蔵という、その手の匂いプンプンの組織だろう。
と思って、昔の記事を掘り返そうと思ったら、案の定誰かが嗅ぎつけてきた。本日の人気記事ランキングの20位に登場している。
20「仁風林」のうわさ話
あの頃の記事はすでにみんな消えてしまったから、私のブログのようなサイトが役に立つことになる。そういえば一時廃った山崎拓のセックス・スキャンダルも、今や堂々の一位だ。
山崎拓のセックス・スキャンダル
そう思ってみてみると、ベスト20の半分位はそんな記事ばかりだ。
案外こんなサイトづくりが狙い目かもしれないね。

縁切りの手紙

「幸せの黄色いハンカチ」の冒頭画面だ。武田鉄矢がこの手紙で絶望の淵に追い詰められて、マツダの自動車で旅に出る。

ロードムーヴィーの出だしとしてはきわめてよくあるパターンだ。

しかしその縁切りの手紙にどう書いてあったかはまったく覚えがなかった。

これがその手紙だ。

enkiri

今の人は知らないだろうが、好きか嫌いかをあらわす、あるいはその行為がもう終わりかどうかをあらわす唯一の手段は手紙だった。

今ならメールで「さよなら、ごめん」で終われるのだろうが…

なお、「いつまでもお友達でいましょうね」は、女が男に告げる縁切りの常套句だった。

これは別れに際して言うべき言葉ではなかった。

これが「二度とおめぇの顔なんか見たくねぇよ」という言葉の日本語訳だというのは、男にはなかなか飲み込める言葉ではなかったからである。

桃井かおりは武田鉄矢と結婚できたか

あの映画に感激した人が、もし10年後、20年後に振り返ったら、あの二人は結婚できただろうか、その生活は長続きできただろうかという疑問に突き当たるだろう。

その問題は俗物である武田鉄矢にあるのではなく、本質的に人間的自立を求める桃井かおりの側にあるのだ。

幸せとは何なのか、ある意味でその答えをもらってしまった桃井かおりに、武田鉄矢との生活に共感はできないはずだ。なぜなら幸せについてのもっとも俗物的な理解について共感することはできなくなってしまったからだ。

その時子どもができてしまっているかどうかは決定的な問題だ。ここではできてしまったときのシチェーションを可能な限り統計的に後追いしてみる。

多分札幌にまともな仕事はないから職と給料をもとめて武田鉄矢は内地へと戻っていく。

札幌に残った桃井かおりには安定的な職はない。頼るべき身よりもないからたちまち貧困の底へと突き落とされる。仕送りはだんだん減り、間隔は遠くなり、やがて途絶える。

そこへ炭鉱閉山で離職した健さん夫婦が流れ込み、桃井かおりは健さんたちと共同生活を送るようになる。桃井かおりの同輩はそんな身よりもないから、「夜の街」で稼ぐか生保を取るか、たいていはその両方を選択して生きていくことになる。

桃井かおりはそんな女友達のために一肌脱ぐようになり、やがてNGOの代表として働くようになる。

給料のピンハネ、勝手な理由をつけた首切り、パワハラにセクハラ、生保課の保護打切りのおどし、子どもへのいじめと不登校、非行グループへの参加…

地獄への行進曲だ。しかしそこには助け合う組織があり、相互の堅い信頼があり、未来への確信がある。

幸福の黄色いハンカチ、第二部を

幸福の黄色いハンカチの第二部は作られなければならない。それは桃井かおりのその後の生き様を描く映画でなくてはならない。

黄色いハンカチはもう一度、多分札幌の空のどこかに掲げられなければならない。

山田監督、生きているうちによろしくおねがいします。


本日の赤旗には投機マネーの最近の動向に関する注意喚起みたいな文章が載っている。

これも昨日の記事と同じで、どうも絞まりが悪くて何を言いたいのかよくわからない。学生のレポートのようだ。

見出しは
主見出し: 資産運用業で膨張
横見出し: 金融市場揺るがす投機マネー
中見出し: 規制と課税 両面から対策必要

ということになっていて2,3年前の記事の見出しのようだ。

見出しの意味は、こういうことのようです。

1.主見出し「資産運用業で膨張」の意味

巨額の投機マネーが、もともとあった資産運用業に流れ込んだ。
このために資産運用業の資金が膨れ上がり、投機的性格が強まった。

IMF報告書は、「資産運用業が本来は個人投資家や年金基金などから資金を預かり運用する金融業者である、つまり比較的硬い営業をしていたのが、最近は実態が不透明になってる」と指摘している。

これが主見出しの「資産運用業で膨張」という言葉の意味だ。

2.横見出し「金融市場揺るがす投機マネー」の意味

このあたりから論旨がフラフラして、話の筋道が見えなくなってくるが、要するに

* 資産運用会社が、膨れ上がった遊休資金を飲み込んだ。

* これらの運用会社が国際金融市場の主流を占めるようになった。

* 同時に彼らが“ちょいヤバ”の運用を始めた。

ということのようだ。

この間にブラックロック社の説明が入ったり、日本のメガバンクが資産運用会社への参画を目指しているという話が入ったり、ケイマン諸島に眠る資金の説明が入ったり、とにかく知ったかぶりの余分な説明が多すぎる。

もう一つ、この記者は資産運用業と投資ファンド、投機資本などの言葉をあまり規定せずに使っているが、これでは何が良くて何が悪いのやらわからない。

それで、金融市場をどのように揺るがしているのかという話だが、これについてはただの1行も触れられていない。

書き出しのところにこう書かれているのみだ。

2月半ばからの金融市場の動揺は、この資金の流れがコロナ危機で「逆流」したものです。

これではなんのことやらさっぱりわからない。説明すべき事柄を前提に話を進められても、こちらとしては返事のしようもない。

3.中見出し「規制と課税 両面から対策必要」の意味

ここでも規制と課税の意味があまり説明されていない。

規制というのは違法性の高い高速取引を発生現場で見つけ、それに課税することで違法取引を抑制しようというもの。

課税というのはタックスヘイブンを利用した税逃れをしっかり取り立てようということである。ある意味では事後的な手続きだ。

ただ両方とも課税手続きを介している手法なので、規制と課税という表現はやや紛らわしい。



2019年06月17日 資産運用の「3巨人」

を参照されたい。


6月16日付赤旗の経済面に興味深い記事が載った。
題名は端的に「コロナ禍」
コロナの影響を経済面から位置づけようと図った記事だが、あまりに対象が広く雲を掴むようなところがある。

記事は三人の記者の覆面座談会の形をとっているが、これは焦点が定め難いのを、3つの目に分散することによって、とりあえずカバーしておこうという意向の反映かもしれない。

率直に言って記事につけられた見出しや小見出しは適当とは思えないので、私の方でシャッフルしてグルーピングしたうえで、再度組み立ててみたい。

① マクロ経済の危機

各国際機関のマクロ見通しを列挙。

世銀は20年度世界経済成長をー5.2%と発表した。国別では米国-6、ユーロ圏-9,日本-6、新興+途上国は-2.5%とした。これは過去860年で最悪。

OECDも今年度見通しを発表。世界全体で-6%、第2波の如何によっては-7.6%と試算している。

② 先進国(米国)におけるコロナ禍

先進国におけるコロナ禍は次の3つだ。

第一に雇用の喪失だ。2千万人近くの雇用が失われた。しかも雇用の喪失は長期にわたると予想される。

第二に大量の貧困者の出現だ。これは失業に伴うものだ。低賃金労働者、女性、アフリカ系、ヒスパニック系に集中している。

第三に社会の亀裂の深まりだ。コロナ危機は社会のひずみを浮き彫りにしている。その象徴が白人警官の黒人殺害だ。

「この悲劇的事件は人種差別の痛みに光を再び当てた」(FRBパウエル議長)

③ 新興国・途上国におけるコロナ禍

もっとも激しく影響を受けるのは、次の4つのタイプの国だ。ほぼすべての途上国がそのいずれか、あるいはそのすべてに含まれる。

第一に、社会扶助体系の貧弱な国、ソーシャルネットの失われた都市である。

第二に、観光や仕送りが収入の多くを占める従属性の高い国だ。(観光と仕送りを一緒にするのはいかがか?)

第三に、特定輸出産品に依存し、その輸出産品が特定の品目に偏っているモノカルチャー国だ。

第四に、多国籍企業のグローバル・サプライチェーンに深く組み込まれている下請け国家だ。

④ 新興国・途上国の多重苦

新興国・途上国を苦しめるのはそれだけではない。

世界経済的には、今回のコロナ禍を通じてさらに3つの苦難が襲う。

第一に、一次産品全体が著しい価格下落に襲われる。特に産油国では原油価格の下落が著しい経済困難に襲われる。

第二に、先進国の資金引揚げにより、「投資」が対外債務として積み上がる。

第三に、国家財政では債務超過がもたらされ、格付けの低下と通貨の為替レート下落を招く。

その結果、新興国・途上国の経済が、通貨と資産価格の暴落により底抜けしてしまう。

⑤ 資本コントロールが重要

このように世界のコロナ禍の内容を見ていくと、いま最大の課題が見えてくる。

それは第一に、新興国・途上国に対し緊急支援を行うことである。UNCTADによれば、その額は2.5兆ドルに及ぶと試算されている。

4月のG20は最貧国の公的債務支払いを今年度末まで延期することで合意した。しかしこれで収まるわけではない。支払猶予ではなく債務帳消しに踏み込まなければことは収まらないであろう。

それは第二に、巨大資本の急速な資金引揚げを予防することである。

この津波のような引き潮は、巨大資本による資本の巨大な流れがルールを無視して行われた結果起こる。

それを防ぐためにもっとも必要な手立ては、国境を超えた巨大な資本の動きを、国際協調によりコントロールすることである。

UNCTADはさらに、「必要とされる場合には、資本流出を抑えるための対策」が必要となると踏み込んでいる。

第一の方針も、第二の方針もトランプは反対するだろうが、米国の国内を見ても国外を見ても、それ以外の選択はなくなっていくだろうと思う。

ただし、最後の記者Cの発言、
「コロナ危機は新自由主義の横行を反転させた。そして巨大資本の管理の必要性を浮上させた。これは時代の巨大の変化の現れだ」
というのは流石に言い過ぎではないかと思う。

かなり長めのまえがき

仮想通貨「ペトロ」の行方は日本のメディアからはさっぱり浮かんでこない。

実はベネズエラの仮想通貨はきわめて興味ある歴史的実験なのである。それはペトロが最初の国家の運営する仮想通貨だというためであるが、もう一つは、そもそもビットコインをふくむ仮想通貨が一般通貨を乗り越えるほどに通用し、それがドル支配体制を乗り越える可能性があるのかという話だ。

だからこそ米国は仮想通貨を犯罪視し、ベネズエラのペトロ運営責任者を国際犯罪者として敵視するのである。

ペトロに関して重要な日本語記事は2つある。一つはロイターの敵意に満ちた記事であり、もう一つはサンパウロの日経特派員の同じく敵意ある記事である。

それ以外の記事は、断片的ではあるが、好意的な印象で書かれているものも多い。その多くは仮想通貨の当事者であり、ベネズエラの積極的な試みが将来に向けての試金石になってほしいという願いを込めたものとなっている。
それらを時系列風につなぎ合わせてみた。

作った後の感想だが、実はベネズエラのハイパーインフレを止めたのはビットコインだったということである。ビットコインはペトロとは違うが仮想通貨であり、その代表である。
Coindance出典:
   ビットコイン購入量の変化(Coindance出典)

この図が見事にインフレ収束とビットコインの関係を示している(左クリックで拡大)

つまりベネズエラの国民は、わずかでも蓄えを増やす経済力のある人々は、通貨ボリーバルが手に入り次第、それを片っ端からビットコインに変えていったわけだ。
そうして必要なときはそれをボリーバルに変えて買い物をすることになる。これで通貨発行量は激減する。承知の通りベネズエラのハイパーインフレは物資不足よりも投機に基づくものだったから、多分投機筋は相当痛い目にあって市場から撤退していったのではないか。

そう思うと、なにか大きな力がアメリカの圧力に対して、ズリッズリっと押し返し始めているような気がしてくる。

ビットコインは相当上下の激しいものだから、普通なら素人が手を出すものではない。しかし十万、百万というインフレに比べればはるかに安全だ。しかも、ここが大事なところだが、アメリカ政府の思うような動きには決してならない。

アメリカはベネズエラ政府をいじめるに際してマドゥロ派ではない一般国民までもいじめ抜いた。それがやりすぎると国民をビットコインの方に押しやってしまうことになる。ビットコインで生き抜いた人々は絶対にアメリカのドル支配を認めないだろう。

とはいえ、それがドル離れのきっかけにはなってもペトロの側にやってくるとは限らない。要するに庶民はもう政治なんてたくさんだと思っているのではないか。

今後ペトロが国民の間に根付いていくのには、それなりの知恵と、何よりもそれなりの年月が必要だ。しかし国民はもはや決して親米の方向には動かないだろう。

国民はハイパーインフレに苦しむ人々を前に、1千万%などと予想を立ててニヤニヤと笑い済ましていたIMFの連中を許さないだろうし、早く潰れろ早く潰れろと囃し立てていたロイターやBBCのことを信じないだろう。もうひとこと言いたいが、それは我慢する。 

ペトロに関する時刻表

2017年

8月25日 トランプ政権、ベネズエラに経済制裁を発動。米金融機関に対してベネズエラ国債とPDVSA社債の取引を禁じる。

12月3日 マドゥロ大統領、ベネズエラ政府として仮想通貨「ペトロ」(Petro)を導入すると発表。

1ペトロは1バレルのベネズエラ原油代金に対する購買券である。ペトロ保有者は暗号資産取引所で一定の“為替”レートで、ほかの仮想通貨やベネズエラ通貨と交換できる。

12月4日 ワシントン・ポスト、「ベネズエラ全国民が、1万1500ドルの年間所得をすべてビットコインに投資していたとすれば、1人当たり84億ドルの価値になっていたはず」だと論評。

2018年

1月6日 ペトロ発行計画の詳細が明らかになる。通貨の信用裏書きとして53億バレルの原油を割り当てる。これは当時の原油価格で2670億ドルに相当する。

1月6日 マドゥロ大統領、引き当て原油の財源はオリノコ重質油帯のアヤクーチョ油田1だと述べる。
アヤクーチョ油田は埋蔵されているというだけで、稼働しているわけではない。開発計画も整っていない。(ただしロイター記事)
2月 ベネズエラ、仮想通貨「ペトロ」のプリセールを開始。月末のマドゥーロ発表では、127ヶ国の機関投資家による171,015件の購入が認証され、価格にして30億ドルを調達したとされる。

3月19日 トランプ大統領、Petroの使用や購入の禁止を命令。

8月20日 法定通貨のボリバル・フエルテから新法定通貨ボリバル・ソベラノに移行。通貨単位を10万分の1に切り下げる。同時に3600ボリバル・ソベラノを1ペトロ(60ドル)に紐付ける。

10月1日 マドゥロ大統領、ペトロの国民への販売を開始すると発表。
ペトロ計画の意義を強調。ドル依存の国際市場に一石を投じ、国際市場の健全化・多様化を実現すると語る。さらに、国内のダイヤモンド鉱床やアルコ・ミネロ金鉱も割り当てるとする。
10月31日 ペトロ、米ドルなどのフィアット通貨?や一部の仮想通貨で購入可能となる。


2019年

1月14日 マドゥロ大統領が経済改革案を発表。国営企業が売上高の15%をペトロで販売するよう指示。

2月 ポンペイオ国務長官、イングランド銀行のベネズエラ外貨準備12億ドルを凍結するようイギリスに要請。

11月 この時点でペトロを受け付ける企業は400社にとどまる。多くの商店がペトロの受け取りを拒否。

11月20日 米国の制裁のため2019年の原油抽出を削減。PDVSAは批判に答え、裏づけ資源となる原油を50億バレルから3000万バレルに減少させる。ペトロの維持に疑問の声が高まる。

12月 ベネズエラで、公務員ボーナスにペトロを配布。一人0.5ペトロで原油価格に換算して3300円に相当する。

ペトロアップというサイトに登録し、そこに送付・受領される仕掛け。

2020年

1月 政府、昨年度のインフレ率が7374.4%だったと発表。18年の約170万%から大幅に鈍化。IMFは1000万%と予測していた(残念だったね)。

この間ビットコイン取引高が急増。通貨シフトにより、ボリーバルへの依存が減ったため。ただしビットコインとボリーバルとの交換は進んでいない。

1月2日 マドゥロ大統領、「我々はすでにベネズエラ産の鉄や鉄鋼をペトロで販売している。今後は石油もペトロで販売する予定だ」と語る。

1月 マドゥロ大統領、ペトロを使用するカジノをオープンすると発表。収益はベネズエラの公衆衛生および教育部門に分配される予定。

チャベス元大統領は売春、麻薬、犯罪などの温床になるとして、すべての賭博施設を閉鎖していた。

4月 ベネズエラの仮想通貨取引所Criptolago、インターネットを介さない送金システムを開発したと発表。これによりペトロのみならずビットコインも送金可能となる。

6月1日 政府、ガソリンの補助金を撤廃。代わりにペトロで支払いを行えば割引を行うと発表。
これはかなりの名案と思う。かねてより問題となっていたガソリン補助金の撤廃とペトロの普及が一石二鳥という仕掛けだ。もっともこういう美味しい話には裏があるのが普通だが。
6月2日 米政府、ベネズエラの仮想通貨事業の最高責任者であるラミレス・カマチョ氏を「最重要指名手配リスト」に追加する。

6月15日 ガソリンスタンドでの支払いの約15%がペトロにより行われたと発表。




米中新冷戦の本質

これが本質かどうかは知らないが、面白い分析だ。日経の6月1日付の寄稿記事。R.アームストロングという金融論説家によるもの。

1.米中関係の構図

まず私の米中関係の構図を示しておく。

国家としての米国対中国においては力の差は歴然としている。
リーマンショック以来、米国はドルを刷り続けた。物質的富の数十倍にのぼるドルは、ディスインフレのもとで、すべて富として現象している。そしてそのほとんどはアメリカの資本のもとにある。
中国は絶対に勝てない。だからこれはけんかではなく米国の一方的ないじめである。

ところが国家としての強大さを裏付ける、GAFAMなど成長産業は、その競争力の多くを中国での安定したサプライ網に依存している。

さらに製品の販路としても中国が最大の市場となっていく可能性がある。

したがって、米国はその経済的将来を中国に依存せざるを得ない。

代替国はないわけではない。しかしそれを実行するほどの体力がアメリカにあるとは思えない。

中国でウィンウィンの取引というのは、中国側がウィンウィンすること、つまり二度勝ちすることだという。

製品がハイテク化すればするほど、サプライ部門も高度化せざるを得ない。そして高度化したサプライ部門がいつまでその地位に甘んじているだろうか…?

ファーウェイ問題はそういう性格を内包している。これからも似たような問題は相次いで発生するだろう。

2.米中対立で米国は何を得るのだろう?

ここからアームストロングの所論に入っていく。

彼の提示するアメリカ側のオプションは以下のごとくである。

① 議会・政府はコロナ対応、WHO評価、中国企業の市場締め出しなどの派手なパフォーマンスを続ける。
② 香港に関してこれまで与えてきた特恵的な地位を断絶するとの脅し。具体的には「香港ドル」の否認。
③ 二正面作戦の強制。サプライチェーンを脱中国化する。ただし中国に販売するものについては「現地生産」を続ける。

これを見れば中国バッシングが不可能であることが明らかだ。「香港ドル」の否認はあるいは可能かもしれないが、サプライチェーンの脱中国化は共倒れの試みにしか過ぎない。(香港ドルの将来は正直のところ、私にはよくわからない)


3.中国に国際協調を迫るために

考えてみれば乱暴な話で、中国に国際協調を迫るために、国際協調のルールを無視した干渉を続け、他国へは干渉への協調を迫るというのは無茶だ。

しかし中国側に一部の非もないということではない。

以下の一文は目下私には正否を判断できない。

中国は自由貿易や企業の独立性、国際ルール、知的財産の尊重などで勝手な振る舞いを続けてきた。

ただ、まずはアメリカ自身が「勝手な振る舞い」とやめることが必要だ。ここに来て喧嘩両成敗論を持ち出されるのは、大いに迷惑だ。

今朝の赤旗を見て驚いた。と同時に、なんのことか分からず、訝しみが募った。

その記事は
国際刑事裁に経済制裁も 
トランプ氏、大統領令に署名 
米兵の犯罪捜査を妨害

という三段見出しで掲載されている。

見出しだけ見ればこういうことになる。

① 米兵がどこか、おそらくは国外でなにかの犯罪を犯した。

② これに対し国際刑事裁判所(以下ICC)が捜査に乗り出した。

③ これに対し米国が捜査を妨害する動きに出た。

④ こういう事実関係というか前後関係のもとで、米国は捜査妨害だけではなく、ICCそのものとの対決姿勢を強めた。

⑤ そして今回は、ICCをあたかも敵対機関であるかのように扱い、これに制裁(とりあえずは経済制裁)を課す動きに出た。

⑥ トランプは自らを発出元とする大統領令でこの処置を公式の米国政策と定めた。

ということなのだろう。いずれにしても、とてつもなく面倒な見出しだ。おそらくは現実の流れはもっと複雑なのだろう。

とにかく報道をチェックし、タイムテーブルと作るほかない。あまり複雑にせず、制裁に至る経過に的を絞って流れを整理してみたい。

1.ICCと米国との葛藤 事実経過

2002年

ICCの設立条約(ローマ規定)に60カ国が批准。ICC機関が発効する。

「反人道的犯罪」は、遡及禁止、公訴時効、一事不再理などの一般刑事原則に制限を受けないいとする。反人道的犯罪の責任者を裁くことを目的に設置された。

国際司法裁判所(ICJ)とは別の組織で国連からも独立。

米国はICCへの加盟を撤回。ICCの権限は米国民に及ばないとの立場を示す。

2004年

国連と国際刑事裁判所の地位に関する合意が成立。国際機関としての権威を承認される。

2007年

日本が105ヵ国目の締約国となる。ローマ規程およびその協力法が国会で成立。

2016年

ICCのベンスーダ主任検察官、2003年5月以降の「アフガンでの戦争犯罪に関する予備調査活動」の結果を発表。正式な捜査開始を求める。

米軍が米中央情報局(CIA)運営の秘密の拘束施設で拷問をしていたと信じるに値する根拠がある。

2019年

4月 ICC予審判事部、アフガンでの戦争犯罪調査は「正義のためにならない」と判断。調査を中止する。

19年 トランプ政権、アフガニスタンにおける戦争犯罪容疑で訴追された米軍関係者を赦免。その一方で、べんすだ検察官などのICC職員にビザ取り消しなどの制裁を科す。
アフガニスタンはICCの加盟国だが、捜査には反対の意向を示す。

2020年

2月 アメリカとタリバン、18年以上にわたる戦闘の末、和平に向けた合意に署名。

3月 ICC上訴審、「予審判事たちは間違いを犯した」と述べ、1年前の予審判事部の判断を覆す。検察側の訴えに基づき、アフガン戦争中の戦争犯罪について「真実追究」捜査を実施すると決定。タリバン、アフガン治安軍、米軍と米CIAが対象とされる。

3月 米政府はICC決定に強く反発。ポンペオ国務長官はICCを強く非難。

今回の事態は向こう見ずなものだ。説明不可能な、法的機関を装った政治機関による、まさにあぜんとする行為だ。米政府は裁判所を名乗るこの陰謀組織から米国民を守る。

4月

ICCのベンスーダ主任検察官、パレスチナの法的地位に関する調査を開始。

5月

ポンぺオ国務長官は書面の声明を発表し、この取組を非難。ICCは自らが政治的機構であることを改めて立証したとする。

6月

11日 トランプ米大統領、ICC当局者に対して経済制裁を可能にする大統領令に署名。
米国民の捜査に関与したICC職員が対象となる。該当者の資産を凍結するとともに、入国を禁止。

11日 大統領制発令に当たり、ホワイトハウスが声明を発表。

ICCは、米国・イスラエルに対する捜査を続けている。この捜査は政治的動機に基づいたもので、米国民の利益侵害と米国の主権侵害となっている。

11日 声明発表後の記者会見。

ポンペオ国務長官はICCを「いかさま裁判所」と表現。いいかげんな裁判で脅されることはないと言明。
バー司法長官も「財政上の腐敗や不正行為がある」「ロシアに操作されている」などと主張した。ただし根拠は示さず。


2.各方面の反応

ついで、この大統領令に対する各方面の反応を列挙しておく。

まずはICCそのものの反論(声明)。
ICCへの攻撃は法の支配を妨げる許されない試みだ。
ICCは残虐犯罪の犠牲者にとって正義への最後の望みとなっている。ゆえにICCへの攻撃は犠牲者に対する攻撃でもある。
次にEUの公式反応。EUの外相に相当する外交安全保障上級代表が「深刻な懸念」を表明。
ICCは国際社会に正義をもたらし、最も深刻な国際犯罪に対処するうえで重要な役割を果たしている。すべての国から尊重され、支援を受けるべきだ。

3.以上の情報から分かること

とりあえず、分かる範囲で経過を記載したが、これで最初に上げた6つの行動のつながりがわかってきた。

① 米兵がどこか、おそらくは国外でなにかの犯罪を犯した。

② これに対し国際刑事裁判所(以下ICC)が捜査に乗り出した。

③ これに対し米国が捜査を妨害する動きに出た。

④ こういう事実関係というか前後関係のもとで、米国は捜査妨害だけではなく、ICCそのものとの対決姿勢を強めた。

⑤ そして今回は、ICCをあたかも敵対機関であるかのように扱い、これに制裁(とりあえずは経済制裁)を課す動きに出た。

⑥ トランプは自らを発出元とする大統領令で、この処置を公式の米国政策と定めた。

キーワードはアフガンである。

もともとICC設立の過程でアメリカは積極的な役割を果たしてきた。冷戦構造の一方の旗頭を担ってきたアメリカには「自由と民主主義の守り手」という自負心があった。

しかし一方では世界の支配者として自分の思うままの世界を作りたいという欲望も強かった。
だからICCの創設間際になって、そこから逃げ出しただけではなく、ICCの一貫した反対者に転換した。

しかしそういう一般論だけではない。アフガンでの反人道的犯罪があって、それが白日のもとにさらされ、公式に非難されることへの恐怖が、反ICC意識を駆り立てているという事情がある。

ここを理解しないと、WHOにつづいて今度はICCかということになる。ある意味ではそこがアメリカ政府の狙い目かもしれない。

だから、我々は米軍とCIAがアフガンで何をしたのか、いかにそれが反人道的であったのかを知り、世に知らしめる必要があるのだろう。

赤旗の記事は、複数の記者の共同による力の入った記事である。ぜひ、事の真相に迫るような今後のフォローをお願いしたい。

白い民主主義からすべての色の民主主義へ

1.米国における「4つの差別」

今日の赤旗日曜版で、アメリカ人評論家のジョン・フェファー氏が重要な発言をしている。

黒人男性殺害事件で米国内がこれほどまでに沸騰しているのは、「4つの差別」が背景にあるという。

第一に、警察による人種差別である。今回の事件につながる警官の暴行は系統的で、明らかに人種差別という点で共通している。

第二に、いのちの人種差別である。米国の新型コロナは明らかに有色人種を狙い撃ちしている。それは有色人種の健康や医療が体制的に保障されていないためだ。

第三に、経済差別である。失業率が大恐慌以来最悪の水準に達し、貧困層を直撃している。なかでも都市の有色人労働者がその標的となっている。

第四に、政府による差別である。それはトランプ大統領が関係しているが、それにより連邦政府のこれまでの政策が、差別を助長する方向に歪められていることを見逃すことはできない。

つまりアメリカの伝統的民主主義が、4つの差別を内包しているということになる。

2.白い民主主義の歴史的限界

実は、フェファー氏のいう4つの差別のうち第4点については、私がかなり拡大解釈している。

私は、トランプの差別主義、ひいてはトランプの登場を許してしまったアメリカの民主主義の弱点が問題の歴史的根源にあると考えるからである。

これはアメリカだけが抱える問題ではない。16世紀以降、世界に進出し植民地化し、支配してきたヨーロッパ白人社会が共通して抱える問題だからである。

それを厳しく表現するなら、「白い民主主義」の持つ本質的限界が露呈された象徴的事件ということができるだろう。

私は決して「白い民主主義」の歴史的役割を否定するわけではない。

とりわけ反ファシズムの闘いの旗頭となったルーズベルト大統領のもとでのニューディール政策が、戦後の世界秩序の形成に果たした巨大な役割は巨大なものである。

にもかかわらず、それが非白人の差別の上に成立した民主主義だということは動かしがたい事実であり、そこには超えなければならない歴史的限界があるということである。

2.白人民主主義は人種差別に関して寛容だ

白人民主主義は白人優位に執着している。その結果非白人の社会進出は抑制されている。それは歴史的経過と社会の現実を見れば明らかである。

だからどんなに優れた民主主義であっても、すべての人種に開かれた民主主義にそのまま移行することはできない。それどころか「最悪の民主主義」に移行する危険もある。

この「最悪の民主主義」は、内部的には民主主義そのものであり、その担い手に悪の意識を持たせない分、救いがたいほどに最悪なのである。

20世紀は西欧諸国に民主主義(法の下の無差別平等)の考えが広まった世紀であると同時に、植民地主義と選民思想が風靡した世紀でもあった。両者は共存しうるのだ。


4.すべての色の民主主義を

白い民主主義の軛を抜けすべての色の民主主義の世界に移行する社会的実践は、すでに多くの経験を積んでいる。

その最大の経験は第二次大戦後の植民地解放闘争だ。これらの国(アジア・アフリカ)では白人の植民主義者を追出し、白人民主主義をモデルに自国民の国家を作り上げた。

白人植民者とその子孫により支配層が分厚く形成されている国では、さまざまな移行形態が試みられている。

人口の多くを先住民や混血が占める国では、「民族解放闘争」の旗印が掲げられることもあるが、大事なのはその形態ではなく、非白人系(多数系)のイニシアチブのもとでの民主主義国家づくりという方向性であろう。それなしに差別からの自由は実現し得ない。「解放」(Liberation)というのはそれを目指しているものと考えられる。

この運動の先頭を担っているのがベネズエラの革新政権だろうと思う。(すみません。体調不良にて脳みそがスタミナ切れしました)

「いわゆる夜の街」は発言者の品位だ

それは「強烈な正義感」に基づく曖昧な定義だ。つまり禁じ手である。とくにその表現が社会的弱者に向けられている点で、きわめて危険な思想だ。

同時にそれは口にするのもはばかるような下品な言葉で、人中で大きな声でしゃべるような言葉ではない。若い人にはわからないかもしれないが、それはたんなる繁華街ではない。それは「夜の街」という一つの単語であり、立ちんぼであろうと赤線であろうと、つまりは売春街なのだ。

「夜の繁華街」と「夜の街」とはまるで違うものなのだ。

むかしたしかそんな名前の映画があった。「こんな女に誰がした」というのが主題歌だったんではなかったか。

それはともかく、人の上に立つ人で、これほど危うい情緒的表現で人々を貶める人物は見たことがない。

一言で言って、人としての品性が感じられない。厚塗りの顔をひんむくたら、真っ黒なドロドロとしたものがうごめいているのではないかと思ってしまう。

第一に、それは強烈な嫌悪感をうちに秘めた言葉だ。聞くだけでもおぞましい言葉で、公の場で然るべき立場の人が口にするような言葉ではない。

彼女には独特の「健全な街」概念がある。それが基準になって、それ以外の世界を嫌悪し排斥することになる。
彼らをいなくても良い人々、いないほうが良い人々と捉えているようだ。

「夜の街」はたちまちのうちに黒い世界、闇の世界を指す言葉に置き換えられていくのではないか。あるいはそれを期待して吐き出された言葉ではないか。そういう危うさを強烈に感じる。

第二に、それはきわめて曖昧で境界はあえてぼかされている。具体的な業態に基づく区別ではなく、曖昧で強烈な正義感に基づく分類だからである。

その言葉をあえて認めたとして、「あれは夜の街、これは健全な街」という線引が生じることになる。

その際に強烈であることと曖昧であることが、きわめて危険な傾向を生じることは避けられない。

悪がランキングされ、「夜の街」は無間地獄として位置づけられる。しかもそれは「いわゆる夜の街」として恣意的に拡大解釈されていくことになる。

第三に、これはあまり考えたくはないことだっが、このようなソーシャルバッシングは、「このようなウジ虫どもに営業を保証する義務などない」とし、「補償なしの自粛」を強要する手段としても使いうることだ。

これは弱者を不良者として切り捨てる思想であり、うまく行けば偏見と憎しみをその糧に、包囲網をさらに拡大していくことも可能である。

ではどう表現すべきか。事実に即してありのままに客観的に語ればよいのである。

夜の繁華街は夜の繁華街として語ればよい。たまたまクラスターが発生したとしてもカラオケやクラブやライブハウスは「いわゆる夜の街」とは無縁である。スナックなど女性の接待を伴う店でも、別にいやらしくない健全な店はたくさんある。


Note というサイトの6月5日号に
という記事がある。飲食店/人/組織づくりコーチの野口信一さんが書いている。一昨日アップされたばかりだ。

かゆいところに手が届くような、親切な文章で、裏返せば危機感がひしひしと伝わってくる文章だ。詳細は本文をご覧いただきたい。

 ここに掲げるのは野口さんの労作だ。
業態

地域によって業態表現や呼称、客単価額や閉店時間など様々で、仕事で全国47都道府県に行き、各地の“夜の街”を訪れた小生としての標準化ではあるが、凡そ間違ってはいないと思う。
とある。

野口さんの提言は下記のごとくである。

①業態呼称を公明正大に行政が利用し、
②“接待を伴う飲食店”や“夜の街”と総括するのではなく、
③“イカガワしい秘匿性の高い業種”扱いをせず、
④個別の業態として世に認知されるべきだ。

この提案が正しいかどうかはわからないが、少なくとも行政が率先して「いわゆる夜の街」と差別をするよりははるかにマシと思う。


取り越し苦労といえばそれまでだが、これまでも私達は、部落民、朝鮮人、アイヌ人、沖縄人などに対する根拠のない、常軌を逸した差別が行われるのを見てきた。

この都知事発言がある種の職業、職域に関わる人々への集団「虐殺」につながらないよう見守りたい。

1.超帝国主義はまやかしだ

ネグリの「帝国」はGAFAMのことであろう。当時はまだ正体がわからなかったから、ヘッジファンドとか言っていたが、ようするに新自由主義の発達に伴って、これまでの多国籍企業の枠を超えた超国家的権力が生まれつつあるということだったのだろう。

この考えは2つの点で、大間違いだとうことが分かった。

第一にGAFAMの下に生まれつつある超帝国主義は資本の持つ悪意が極度にまで進展したものだということ。
決して資本主義の進歩した形態ではなく、もっとも腐朽した形態なのだ。

第二に、GAFAMは国籍を持ち、母国によって守られているということだ。
それがもっとも端的に現れたのが、租税回避をめぐる国際論議だ。米国は諸外国におけるGAFAM課税の動きを恫喝し、自国への還流を策している。

つまりGAFAMは超国家権力ではなく、アメリカ帝国主義の一部であり、そのバーチャルな表現なのだ。

2.新自由主義とグローバリスムは厳密に使い分けられなければならない

両者の意味は、少なくとも経済学的にはまったく異なる。しかしその言葉の指す現実社会の領域が類似しているので、しばしば混同される。中には意識的な混同もある。

これはグローバリズムという言葉が多義的であることに原因がある。また新自由主義も学説としてのマネタリズムという他に、主として米財務省が打ち出した国際貿易、金融政策という意味があって、これも意識的に混同される。

新自由主義政策のマニフェストは、ワシントン・コンセンサスである。

これは以下の条項を原理とする
1.資本の移動の自由
2.通貨の交換の自由
3.労働の移動の管理と制限

繰り返しになるが、もう一度確認しておきたい。

「世界資本主義」は、労働の自由と労働者の移動の自由が確保されない限り幻想である。それはアメリカ帝国主義に対する幻想である。


3.マルティチュードと新中間層

とはいえ、先進国や一部の新興国では資本の一定の蓄積のもとで、中間層が形成されつつある。

以前から、こうして形成される新中間層とは何なのかがずっと気になっていた。

去年ニカラグアを訪問したとき、政権を支えるヤング世代の人々の存在が非常に気になった。

サンディニスタ革命40周年というから2世代経過している。サンディニスタが政権を降りてから30年だ。つまり35歳以下の人々、すなわち人口の圧倒的部分はサンディニスタの闘いを知らない。

彼らの多くは2006年、ダニエル・オルテガが大統領に再選されて15年の業績で判断しているのだ。
関係者の話をいろいろ聞いて分かったのは、彼らには定職があり、それは、生活は厳しいが誇りを持てる職業だということだ。彼らはこの間に偽りのない教育を受け、ディーセント・ワークを獲得している。

教員であったりナースであったり、清掃であったり、ゴミ収集であったりするが、公務員だ。正規の労働者として保護される。そんな国は中米に一つもない。

第二には社会的生活基盤が整備され、共稼ぎで子を育て、世代を再生産する余地があるということだ。それは家族の明日があるということであり、未来には安定が期待できるということだ。

これは、中間層=小ブルと考えるこれまでの発想とはまったく異なるが、全人口の95%が貧困層・失業者に属するような社会ではきわめて妥当な定義だ。

肝心なことは、その新中間層が既存の支配層と貧困層を結びつける接着剤となって、国家と国民を形成することなのだ。

昨年4月ニカラグアでは、金で雇われた「民主主義派」の暴動や暗殺などの策謀を平和的に吹き飛ばした。それは私達がこの目で見てきた。

ベネズエラでも、相次ぐクーデター策動や経済封鎖で明日にでも崩壊しそうな政権が、実はアメリカの攻撃に耐え抜く底力を身に着けつつあるのではないだろうか。

4.非生産労働者こそマルティチュード

ラテンアメリカのことだとつい力が入ってしまう。

話がとんでしまったのだが、私はマルティチュードはこのような形で生まれてくるのではないかと思う。

彼らの多くは、物質的生産→流通・販売という広義の生産過程ではなく、物質を消費し、それにより生活を生産し、それにより欲望を生産する過程にかかわる労働者であり、そノ生活インフラを支える労働者であり、マルクス流に言えば非生産労働者である。

5.生産は欲望の拡大と道連れで拡大する

たしかに物質的富の生産こそが社会の村立基盤であり、生産関係が社会関係を規定する。そのことを否定するものではない。

ただ産業革命とマルクスが観察した急速に発展する資本主義社会というのは、世界史的には例外の時代だったのではないかと考える。

それは大規模な世界交易の発展期であり、海外市場は無尽蔵であり、工業製品は作れば売れる時代だった。場合によっては大砲で脅して買わせることも“自由”だった。
したがって物質的生産が度外れに強調される時代だったのである。

市場が円熟すれば、消費活動を抜きに生産活動は語れなくなる。

そこで第二次大戦後の大量生産・大量消費時代が展開されたのだが、人工的に煽られた欲望にはいずれ限界が来る。

そのような「大衆社会論」の行き詰まりが新自由主義を招いたのだが、これは「神の手」論と「トリクルダウン」論に基づくフィクションである。

こんなことをしてはいずれどんでん返しがやってくる。みなそれを感じながら目をつぶって進んできたのではないか。そしてコロナが最悪のどんでん返しをもたらすのではないか。

6.欲望にも市場がある

もちろん欲望の一番の基礎は物質的富にあるのだが、現代では物質的富は一部に過ぎず非物質的なものへの欲望のほうがはるかに高い比重を持つようになっている。

非物質的欲望の一番基礎に座るのは、社会的サービスだ。医療・教育に始まって、清掃から防災など多岐にわたる。私はこれを社会インフラと呼ぶ。

そしてその上に、芸術・スポーツ・娯楽などの実に多様な世界が広がっている。私はあまり勉強していないのでお教えいただければありがたい。

社会インフラが等差級数的に進めば、枝葉の部分は等比級数で拡大する。社会の人的生産力はますますこの世界に広がっていく。

非物質的市場のイメージについては、到底わたしに論及しうるようなものではないが、以下は言えるのではないか。
すなわち、それはかなり労働力市場と近縁のものであり、その“裏返し”の形態を取るのではないか。

社会インフラで働く労働者がその他の労働者を引っ張り、労働者階級の前衛に立つ形で市場の一報を形成していくのではないかということだ。

7.社会インフラ労働は本質的に協業である

物質的生産労働においては分業が本質であり、協業は補完的である。大規模生産においては部門内での協業がかなりの程度まで発展するが、社会的生産の主流を形成するわけではない。

これに対し、社会インフラ労働は、すでに社会の手によって分割されたものとして提示されている。だから社会インフラ労働は本質的に協業的であり、かつ社会的である。

ネグリは、おそらく無意識的であろうが「生産的協働」という言葉を用いている。

ネグリはそれをこういう。
マルチチュード労働者の保有する活動諸力は生活すること、愛すること、変革すること、創造することである。マルチチュードの生きた労働こそが、潜在的なものから現実的なものへの通路を築きあげる。
それらの生きた労働は直接的に社会的ネットワ!ークであり、コミュニティーの諸形態である。
非物質的労働は本質的に協働的であり、必然的に社会的相互作用をもたらす。
これらの特徴が非物質的労働自体を価値づけているのだ。

その兆候はすでに、オキュパイ闘争を通じて現れている。オハイオ州での下級公務労働者の反緊縮の闘い、最低時給の引き上げを求める闘争に示されている。

平井文子さん「中東におけるコロナショックをめぐる状況」ノート

AALA オンライン国際部会から


中東諸国での感染状況

トップはトルコ( 感染者16万人,死者4500人、世界で 10 位)、2位がイラン( 14万人、死者7400人、12 位)である。

以下サウジ、エジプトと続く。

湾岸産油国は人口は少ないが感染率が高い。これは感染者に占める出稼ぎ労働者の割合が多いからだ。彼らはタコ部屋に閉じ込められ、 失業しても 帰国も出来ない状態に置かれている。

このほかおそらく相当多いと思われる難民・避難民に関しては信頼できる統計はない。

各論

1.アメリカ

1 1 月の大統領選を控えたトランプ政権 は、国際法・国連決議を無視して親イスラエル政策を推し進めている。

オバマ政権(2009~2017)はブッシュの一極主義戦争(アフガン戦争、イラク戦争)の後始末に力点をおいた。

シェールオイル・ガス生産増による中東への石油依存度の低下という事態が、アメリカの中東政策の変化をもたらした。

泥沼化したシリア内戦には軍事・政治介入を最小限にし、トランプの口からは「シリアはロシアに任せる」という言葉が飛び出している。

当面の中東政策は、イランの驚異を強調してペルシャ湾の緊張を煽り、サウジ等への大量の武器輸出で儲けることにあるようだ。


2.イスラエル

率いる与党リクードはこの間 3回の総選挙 を
繰り返したが勝利できず、組閣不可能状態にあった。

ところが、コロナショックを機に挙国一致の 新連立政権が成立した。これによりネタニヤフの首はつながった。


3.パレスチナ

3月、イスラエルの治安部隊は西岸で100
戸の家を急襲し、217人のパレスチナ人を逮捕した。そして西岸の5つの村へのアクセスを遮断した。

閉鎖は仕事、教育、農業、医療などまともな日常生活の維持を困難にし、住民の生活を崩壊させた。

ガザは恒常的な封鎖下で、人の出入りが厳しく制限されている。

このため、新型コロナの感染が抑えられている。しかし、医療設備が整っていないため、万一感染爆発が起これば甚大な被害が予想される。

3.アルジェリア

2019 年2月、ブーテフリカ大統領(当時81 歳)が5選を狙ったが、民衆の抗議により阻止された。当時ブーテフリカは81歳だった。

しかし12 月に行われた大統領選挙ではブーテフリカと同じく軍部の応援する元首相テブン氏が当選した。

その後テブンの就任を認めない民衆の平和的抗議行動が続いていたが、コロナを機に政府は外出禁止、集会禁止令を発し、ヒラク潰しにかかった。


蛇足ですが

リージョナルな政治情勢の流れを、アメリカの政策から始めて展開していく手法は、いまでは懐かしくさえ感じられます。

しかしその手法がいまでもきわめて有効であることに驚かされます。

これは中南米の情勢分析をする際にはもっと有効だろうと思います。


1. アフリカにおけるコロナの罹患状況

アフリカでのコロナの流行拡大の速度は意外に遅い。

5月26日時点のアフリカ全土の感染者数は推定で約12万人、死者数は約3500人で、欧米に比べると圧倒的に少ない。

アフリカ各国の感染者数を見てみると、南アフリカが2万4千人、エジプト(1万7967人)やアルジェリア(8503人)、ナイジェリア(8068人)、モロッコ(7556人)、ガーナ(6964人)、カメルーン(5044人)で多くなっており、この7カ国で全体の感染判明者の約67%を占めている。

一方、感染判明者が100人に満たない国も10カ国ある。

2.疾病統計はほとんど当てにならない

しかし、感染者数はまったく当てにならない。

英BBCによると、千人当たりの検査数はチャドが0・1件、マリ0・17件。アフリカ最多の2億人近い人口を抱えるナイジェリアも0・23件だ。

タンザニアでは、政府による感染者数の発表が1カ月近くされていない。

3.感染の広がりが遅い理由

アフリカで感染の広がりが遅い理由には3つある。

第一にコロナ関連疾患は上流階級の病気だからである。コロナは飛行機に乗ってやってくる。
ほとんどの人には縁のない世界だ。

第二に、アフリカ諸国の平均年齢はべらぼうに若い。だから感染しても不顕性で収まってしまう可能性がある。

第三に、アフリカ諸国の多くにはまともな検査体制はないから、統計数字には意味がない。PCRをサンプリングで施行して、推計する以外にない。

4.ロックダウンは有害無益

こういう国で、ドラスティックな封じ込め作戦を取ることは不必要で有害である。

コロナについてのリテラシーを拡大すること。収容施設をしっかりとること、マスク・手洗いの励行、三密対策の実行が必要だろう。

すみません。参考記事が少ないため、あらっぽい文章になってしまいました。

新型コロナウィルスの研究の変遷

基本的な知識は東洋経済ONLINE 2月12日号「新型コロナウイルス:専門家見解で人工で製造することは不可能」が詳しい。これは中国の民間誌『財新』の提供記事だそうです。

1月12日 中国科学院武漢ウイルス研究所、新型ウイルスの遺伝子情報を解析。WHOに提供。

中国科学院が武漢に持つウイルス研究所は、中国で唯一のバイオセーフティーレベルP4の実験施設を有している。幹部研究員の石正麗氏はコウモリを宿主とするウイルス研究が専門。コウモリを求めて雲南省の洞窟などに通う姿から、「バットウーマン」とも呼ばれる。
2017年SARSがコウモリを起源とする、SARS型コロナウイルスによるものであることを明らかにした。
石済麗

1月21日 中国科学院上海パスツール研究所などが新型コロナの人感染機序を明らかにする。新型コロナと一体化したS-タンパク質が、人のACE2受容体を介して呼吸器官の表皮細胞に侵入すると推定する。

1月22日 中国の研究者の共同論文が「Journal of Medical Virology」に掲載される。新型コロナウイルスは、コウモリのコロナウイルスと起源が未知のコロナウイルスとの間で遺伝子が組み替えられることによって発生したとされる。

1月23日 石正麗ら、bioRxivで、「新型コロナウイルスの発見とそれがコウモリを起源とする可能性について」という研究論文を発表。
雲南キクガシラコウモリに存在するRaTG13コロナウイルスとの一致率は96%に達していることが明らかになる。この研究は『ネイチャー』誌の2月3日号で発表された。

人工ウィルスではない証拠
ただし相違点4%は、遺伝子変異1200カ所起こるのに当たり、人工的操作では不可能。
またDNAを切り離し接合するにはエンドヌクレアーゼを挿入する必要があるが、新型コロナにそのような形跡はない。

1月26日 親人民解放軍系民間軍事サイト「西陸網」が、「新型ウイルスはアメリカがつくった中国人だけに作用する生物兵器だ」という陰謀論系の記事を掲載。

1月末 「新型コロナウイルスは人間が造った生物化学兵器だ」(陰謀論)が中国内外に広がる。また石氏の実験施設がウイルスの発生源ではないか、という「疑惑」が飛び交う。

1月31日 デリー大学の研究者がbioRxivで「2019新型コロナウイルスの棘突起タンパク質に含まれる独特な挿入配列とエイズウイルスのHIV-1 dp120、Gagタンパク質との間で見られる奇妙な相似性」という研究論文を発表。

まもなく論文を撤回し、以下のコメントを残す。
このストーリーはすでにソーシャルメディアとニュースメディアにおいて異なる仕方で解釈され、拡散してしまいました。私たちには陰謀論にその議論の根拠を提供する意図はありません。私たちはさらなる分析を行ってから修正版を提出することにしました。

インド論文に対する批判が集中。
エイズウイルスは逆転写ウイルスでありコロナウイルスとの間には大きな違いがあるためDNA間で組み換えが起こる可能性が低い。従って相同性があったとしても生物学的な意義はない。
とされる。

2月2日 石正麗氏、微信(WeChat)のモーメンツに投稿。

新型コロナウイルスは、大自然が人類の愚かな生活習慣に与えた罰だ。私、石正麗は自分の命をかけて保証する。実験施設とは関係がない。不良メディアのデマを信じて拡散したり、インドの“科学者”の信頼できない分析を信じる人にご忠告申し上げる。「お前たちの臭い口を閉じろ!」と。

2月3日 亡命富豪の郭文貴、「西陸網」の記事を引用し、「新型コロナウイルスが生物兵器であることを軍が公式に認めた」と報道。

2月4日 石正麗は中国の独立系メディア「財新」に対し「陰謀論者は科学を信じません。私は国の専門機関が調査を行い、私たちの潔白を証明してくれることを望んでいます」と語る。

2月9日 法輪功の衛星テレビ番組、「新型コロナウイルスは人工ウイルスの可能性が高い」と報道。

2月18日 ワシントン・ポストのインタビューで、専門家の意見を報道。「人工的なものを示す痕跡は皆無であり、生物兵器である可能性は強く排除できる」

3月28日 米国立保健機構(NIH)のコリンズ所長、新型コロナウィルスは人為的産物ではないとコメント。

「武漢コロナ」に関するトランプ発言の変遷

4月14日 ワシントン・ポスト、「2年前に科学分野の外交官が武漢の研究施設を訪問し、安全管理に対する懸念を報告していた」と報道。

4月15日 FOXニュース、複数の情報筋の話として「新型コロナは生物兵器として開発されたのではないが、武漢の施設での研究過程で漏洩したもの」と報道。

4月15日 トランプ大統領、「それぞれの報道について徹底的な調査を進めている」と語る。

4月17日 リュック・モンタニエが、ニュース番組に出演。新型コロナは人工ウイルスだと断言。(これに関してはこちらを参照)

4月17日 中国が武漢の死者数を約1.5倍と大幅に上方修正。トランプは「中国は情報を隠蔽している」と非難。

4月18日 トランプ「もし故意ならば中国は報いを受けるべきだ」と先鋭化する。

4月21日 WHOのシャイーブ報道官、「武漢の研究施設が発生源とはみていない」とし、モンタニエの「研究施設で加工されたもの」との主張を否定。

4月22日 ポンぺオ米国務長官、新型コロナは武漢の研究施設から流出した可能性があると発言。市内数カ所の研究施設の調査を求める。

4月30日 トランプ 記者会見

「武漢の研究所が新型コロナの発生源だ」と強く確信させる証拠を発見している。

ただしその数時間前に出された国家情報長官室(ODNI)の公式声明文ではこう書かれていた。

情報機関は全体として、新型コロナウイルスは人工でなく、遺伝子組み換えでもないと考える。
情報機関(複数)は武漢の研究施設でのアクシデントの可能性を検討するため、さらに調査を続ける。

4月30日 ニューヨーク・タイムズが以下の記事を発信。(発信時刻は)トランプの記者会見の直後。

見出し「トランプ政権高官が、ウイルスと武漢の研究所をつなげるよう、スパイに圧力をかけている模様」

情報機関の分析官たちの一部は、それによって情報分析が歪められ、中国批判のため政治的に利用されることを危惧している。
ほとんどの情報機関では、
①研究施設からウイルスが流出した証拠は見つからないだろう
②所外で動物から人間に感染した可能性が圧倒的に高い
と考えている。

4月30日 CNNも、「トランプ大統領の主張は、情報機関と矛盾している」と報道。さらにポンペオ国務長官が圧力の先頭だと指摘。

5月1日 AP通信によれば、国土安全保障省は「中国は新型コロナの深刻さを隠し、その間に自国用に医療器具を確保しようとした」と分析。

5月3日 トランプ、FOXテレビで発言。ウィルス流出について「彼らはひどい過ちを犯しそれを隠そうとした。非常に決定的で強力な報告書が出るだろう」と語る。

5月3日 ポンペオ国務長官、ABCテレビ番組で「新型コロナが武漢の研究所から流出したという多くの証拠がある」としたが具体的な内容には触れず。

5月4日 トランプ、「関税引き上げは中国への最も重要な罰則だ」と語る。

5月初め SNSで「中国科学院武漢ウイルス研究所の幹部石正麗が、秘密文書を持ってフランスの米大使館に亡命申請した」との情報が拡散。

5月6日 ポンペイオ長官、記者会見で「研究所から流出したか、ほかの場所からなのか確信があるわけではない」と述べ、従来の発言を修正。

5月7日 トランプ、「報告書が出てくるが、君たちに見せるかどうかはわからない」と述べる。

5月7日 米軍のミリー統合参謀本部議長、新型コロナは「人工的に作られたものではない。決定的な証拠はないが、意図的に流出されたものでもないだろう」とかたる。

5月11日 武漢ウイルス研究所の袁志明研究員、「危険度の高い病原体を扱う実験室では密閉性を確保しており、流出の恐れはない」と説明

5月24日 武漢ウイルス研究所の王延軼所長、「新型コロナの遺伝子情報はこれまでの研究対象と大きく異なり、ウイルスが流出した可能性はまったくない」と疑惑を否定。
所長

5月25日 石正麗、流出説を否定。さらに科学の政治化を憂慮すると発言。

5月29日 トランプ「新型コロナの初動に問題があった」とし、WHOを中国の「操り人形」と批判。関係解消を表明。


「インド・コロナ問題に関連した資料」
5 月 27 日 のAALA ウェブ勉強会で清水 学さんが報告したものである。

なかなか手に入りにくい報告なので、その要約を紹介しておく。(一部日経新聞などで補充)

 
1. インドにおけるコロナ感染の経過

1 月 30 日 インドで最初の感染者が確認された。

3 月 25日 全インドを対象にロックダウンを実施した。このときまだまだ死者数が 2000 人未満の段階だった。予定期間は3週間であった。

4 月 15 日 全土ロックダウンを再延長。

4 月 20 日 感染者が少ない地域での経済活動の再開が部分的に認められた。

5 月 1 日 全土ロックダウンを5 月 17 日まで再度延長した。

5月15日 ロックダウン中にもかかわらず感染者の急増が起こった。感染者数では中国を超えてアジア諸国のトップとなった。失職者が農村に帰る際に新型コロナを持ち込む構図となる。

5月17日 全土ロックダウンを5月末日まで再度延長した。

5月25日 感染者は2週間で倍増。14.5 万人に達した。これは世界9位である。死者数 は 4172 人で中国に接近している。

5月 都市部の失業率が26%に達する(ロックダウン開始時には9%)。全国では1億2千万人が職を失った。その7割は日雇い労働者(日経新聞) 

6月4日 新型コロナ感染者21万人。新規感染者は1日あたり9千人のペースで増加。

この経過を見て清水先生は次のように結論している。

社会的セーフティ・ネット・システムが不十分の場合は、ロックダウンの副作用はコロナ感染防止効果よりも大きくなり、全体としては社会的に も マイナスになる可能性さえある。


2.なぜロックダウンが悪かったのか

13 億強の人口大国 において一斉に全国一律な形でロックダウン の対象にした。その予告はわずか 4 時間 前であった。

A.  大幅な需要減

食品とアルコール以外の消費は控えられている。

自動車の販売 台数 はほぼ ゼロである。エアコン・冷蔵庫・ TV などの耐久消費財も同様な状況である。宴会・航空機や 列車による旅行などのサービス業も同様である。

 その結果27 万以上の工場、7000 万の中小企業が需要減に苦しんでいる。

B. 労働者への被害

全土ロックダウンで仕事を失った者は 1 億 1400 万人、そのうち 9100 万人が 大都市での 日雇い労働者だった。さらに 1700 万人のサラリーマンがレイオフされた。

ロックダウンは都市で働く出稼ぎ農民を襲った。職を失った出稼ぎ農民は帰省を図ったが、それらは都市に封じ込められた。

C. ムンバイにおける日雇い労働者=出稼ぎ労働者=スラム居住者の動向

ムンバイの例を見てみよう。ムンバイでは日雇い労働者=出稼ぎ労働者=スラム居住者である。それはムンバイ2千万人市民のうち500万人程度と見られる。

彼らはロックダウンされたが、そのまま都市に残れば生活の見通しはなく、むしろ飢餓の危険さえある。

そのためあらゆる手段を使って帰省しようとする。炎天下での悲劇的な徒歩旅行が始まる。50 度を超えるのも珍しくはない。

皮肉なことに、ロックダウンが都市から農村への移動を強制するのである。

5 月中旬になると政府も列車・バスを準備して帰省を援助せざるを得なくなった。その数8000 万人といわれる。


3.政府の景気刺激策

5月12日、モディ首相は第 3 次経済的刺激策を発表した。財政規模はGDP の 1 割に相当する30兆円である。

刺激策の半分近くはインド準備銀行(中央銀行)による低利融資分である。しかし借り手がほとんどなく資金は中銀のレポ口座に残ったまま積み上がっている。

結局有効な貧困者支援となっているのは、一人当たり月あたりで
穀物 5 ㎏、チャナ 豆1㎏の現物支給のみである。食用油と塩は含まれていない。それが供与される期間は 2 か月しかない。

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