2019年4月27日 日本経済新聞
まず連銀はこの10年間で4.5兆ドルのドルを発行した。500兆円、日本の5年分の予算と匹敵する。
これだけドルを乱発すればインフレになるのが普通なのに、まったくそのようなそぶりもない。
結果として米連銀は大金持ちになってしまったわけだ。
見えないインフレ
これは世界経済にとって何を意味するか。換金可能な現金・有価証券が世界に溢れ、その結果、物質財に対してアメリカ以外の国の持つドルは目減りしたことになる。見えないインフレだ。
不況に加えてインフレが襲えば、経済困難はますます耐え難いものとなる。
金融構造の正常化は始まったが、実体経済の正常化は進んでいない。
ドルは実体経済にとって「麻薬」
つまりドルは溢れているが、ユーザーサイドでは欠乏感が支配している。ドルなしでは生きていけないのに、「もっと多くのドルを」と望めば、それはますます自分の首を締めることになる。
まさにドルが麻薬化しているのである。こうなるとドルの需要は底なしとなり、アメリカのドル支配は絶対的なものとなる。
魔法使いの弟子がホウキに水くみを命じて、それが止まらなくなってしまったような恐怖感を感じる。
国債決済通貨とドルの切り離し
ドルの麻薬化は資本主義経済と国際金融システムにとってなかば宿命である。これまでは実体経済における決定力と、覇者としての節度によって金融秩序がかろうじて保たれてきたが、10年間で500兆円という巨額のドルが垂れ流されたのでは溜まったものではない。コカインを通貨代わりに使うようなものである。
かってケインズが夢見て果たせなかった国際決済通貨「オーロ」の実現に向けて一歩を踏み出す以外にはないだろう。