鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

13年4月、ぷらら・Broachより移行しました。 中身が雑多なので、カテゴリー(サイドバー)から入ることをおすめします。 過去記事の一覧表はhttp://www10.plala.or.jp/shosuzki/blogtable001.htm ホームページは http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」です。

2012年05月

高速取引に関しては園田義明めも。が非常に詳しく、勉強になる。

あらかじめ設定したプログラムに基づいて、コンピュータによってミリ秒(1/1000秒)またはそれ以上のスピードで注文を出す取引のこと。

英語ではHFT(High-Frequency Trading)と呼ばれているが、日本では「高速取引」と称される。

アメリカでは売買高で、デリバティブ市場で3-4割、株式市場では6-7割を占めているといわれる。

証券監督者国際機構(IOSCO)は

①登録、認可制の導入、②特別な手数料や税の課徴、③プログラムの暴走についての事前検証、④機関投資家の「鞘取り」(フラッシュ・オーダー)禁止、④過去の取引の記録・検証システム

などを柱とする規制案を準備。

東証では、「現在のルールで十分に対応可能」としているらしいが、日本の国債は世界的に見て特異な状況にあり、投機が集中した場合、深刻な脆弱性を暴露するのではないかという懸念もある。

東証が大丈夫でも、大量に国債を保有する地銀などが対応できなければ、たちまち狼狽売りが連鎖するかもしれない。

とにかく敵はでかい。すでに一国の政府で対応できるレベルではない。


日本の株式市場がかなり荒れはててしまったようだ。
①株式売買に占める海外投資家の割合は2005年に45%だったが、今年5月には71.1%に達した。個人投資家は18.5%にまで低下している。
②売買注文の4割は1秒間に500回以上の売買を試みる高速取引である。こうした高速取引を行っている業者は10社程度である。

すなわち、日本の株式市場は一部の業者に占有され、なおかつ高度に投機化していることになる。企業のための信用創出という株式市場本来の機能は大きく損なわれている。

市場関係者にしてみれば、投機筋の規制で取引高が減少するのは短期的には避けたいところだろうが、中長期で見て市場の信頼を回復するためには、取引税の導入についても前向きに考える必要があるのではないだろうか。


大飯原発再稼動の政治判断に関して、頭に血が上ったのか、個人攻撃にもなりかねない表現。

…実際、福島原発事故で「現地対策本部長」を勤めた池田元久経産副大臣は、あいつぐ原子炉建屋の爆発を受け、修羅場を放り出して福島市に移りました。
いざ事故が起きれば、「監視」どころではありません。

それなりの判断はあったと思うので、「修羅場を放り出した」と断罪するのはそれ相当の根拠がなければならないと思うが…

あの天下のフィナンシャル・タイムズがツィプラスを評価するとは驚きだ。イギリスはユーロには加わっていないから、多少余裕があるのか、あるいはドイツに対していささかふくむところがあるのか…

いずれにしても、国際金融の総本山の一角からもこういう声が上がり始めている、という状況を、わが国の論者も踏まえるべきだろう。


5月14日 英フィナンシャル・タイムズのコラム By Wolfgang Munchau

国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)が定めた、さらなる緊縮財政と経済改革を断行する道では、ギリシャが永遠の恐慌に苦しめられ、債務の罠(わな)から抜け出せない。

それは理論上は経済的にうまくいくかもしれないが、政治的にはほぼ確実に失敗する。

もう一つの選択肢は、ツィプラス党首が示した道筋だ。

彼は今のプログラムを撤回して一部の改革を覆し、残っている対外債務の帳消しを望んでいる。そうしてもユーロ圏からの離脱にはつながらないと主張する。

筆者はツィプラス氏が正しいと確信できないが、間違っているという確信もない。

ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相は、ユーロ圏はギリシャ離脱に耐えられると確信している。しかしこの判断も、長引く誤算の連鎖の1つになる恐れがある。

筆者自身は、ギリシャが離脱を強いられたら投資家はユーロ解体に賭けて激しい攻撃に出ると思っている。

ツィプラス氏のやり方はリスクが高すぎると筆者は思う。だが、ギリシャ国民が同氏に投票する理由は分かる。ツィプラス氏の立場は、経済再生の観点を何一つ 示せない緊縮・中道路線の既成勢力より明らかに理にかなっているからだ。

今のギリシャは1930年代前半のドイツと同じだ

(最後の一言が不気味ですね)

このところツィプラスのニュースが面白い。
フランスとドイツを訪問して、政府首脳とは会えなかったが、左翼政党と会談して共感を得ている。
記者会見やインタビューの記事はなかなか説得力がある。支配層にまで一定の共感を呼んでいる。
翻って日本国内の論調を見ると、なんとも情けないくらい、銀行筋の尻馬に乗ったギリシャ・バッシングのオンパレードだ。

まずは各紙の記事から本人のセリフを抜き出してみる。1338468922


ユーロ圏の異端児、ツィプラス党首が仏独を訪問

MAY 22, 2012 BBC World

「欧州で最も危険な男」、「ユーロ圏の運命を一手に握った男」と呼ばれる。 秀麗な容姿で、元土木技術者で38才のツィプラス氏は、1974年生まれ。ネクタイを嫌い、バイクに乗ることが趣味の完璧主義者だ。

高校生の時から共産党青年連合に加入し、集会や討論に参加して、理路整然とした主張やメディアのインタビューで注目を浴びた。アテネ技術大学で土木工学を専攻した時も学生運動に専念し、全国学生連盟中央委員(95~97年)としても活動した。

ツィプラス氏は09年に急進左派連合の党首になった。その年の総選挙で、急進左派連合は「負債償還の停止、緊縮中止、金融支援の再交渉」を掲げ13議席を確保した。

ツィプラス党首、独仏訪問へ 「われわれは反欧州ではない」

2012年 05月 21日 Reuter

ツィプラス党首
は出発に先立ちロイターのインタビューに応じた。

われわれは全く反欧州勢力ではなく、欧州の社会的結束を守るために戦っている。主要勢力が緊縮策を主張すれば、欧州全体が不安定化し、ユーロ圏が崩壊する恐れもある。それと闘っているわれわれは、おそらく欧州で最も親欧州的な勢力だ。

(メルケル首相がパプリアス大統領に、「ユーロ圏から離脱するかどうか」の国民投票を行うよう提案したことについて) 
ギリシャはドイツの保護領じゃない。他のユーロ圏の国に対して、宗主国のような言動は慎むべきだ。

メルケル首相の立場は極めて孤立している。

ギリシャだけでなく、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドなど、緊縮策に基づく財政再建プランが実施されている国では、そうした政策が明らかに失敗に終わっている。

わたしが政権を取れば、ギリシャをユーロ圏内にとどめるための新たなポリシーミックスを模索する。

確かに、われわれは欧州の支援と資金が欲しい。しかし、欧州の納税者のカネを無駄にしたくはない。

これま での2度の支援は底なしのごみ箱に投じられた。それが続けば、6カ月以内に3度目の救済が必要になる。欧州の人々や指導者はその事実を認識すべきだ。


ニューヨークタイムズとのインタビュー(広瀬隆雄さんのブログより引用)

わたしの要求は、ギリシャに課せられた財政緊縮プログラムを3年間、凍結して欲しいということだ。

ドイツはギリシャ一国くらい犠牲にしても構わないと思っているかもしれない。でも若しギリシャが脱落したら、金融市場は次に血祭りにあげるター ゲットとしてスペインやイタリアに焦点を移すだけだ。

通貨ユーロは17の加盟国から構成されている。これは鎖のようにつながっている。その一番弱いリンク、すなわちギリシャが壊れたら、チェーン全体が連鎖的に壊れる。

EUはブラフをかけてきているようだが、私もポーカー・ゲームが好きだ。

ドイツでの記者会見

5月22日 ブルームバーグ

わたしはギリシャ問題について、共通の解決策を求めてドイツに来た。

わたしは問いたい。ドイツの納税者はいつまで底なしの穴を埋めるためにお金を払い続ける必要があるのか。

一見、資金はギリシャ経済に流れ込んでいるように見えるかもしれない。しかし現実には、ギリシャ国民ではなく銀行とバンカーだけが調達しているのだ。

だから緊縮策を変えることはドイツ国民の利益にもなるのだ。


先日は北京の清華大学の教授の発言として、「中国封じ込めの時代は終わった」との観測があることを伝えたが、今回はアメリカ側の「封じ込め政策は成功しないだろう」との発言が紹介されている。
米国とASEANの賢人会議で、ロイ元中国駐在大使が発言したもので、以下の通り

オバマ政権のアジア政策は「中国封じ込め」のためではない。
オバマ政権がアジアを重視するのは米経済にとって、この地域がだいじだからである。

そうした封じ込め政策はアジア各国の支持を得られず、失敗するだろう。

期せずして米中双方から「封じ込め」政策の終わりが宣言された形だが、それをまともに受け取る人はそう多くはないであろう。

ただ、「そういう方向に行かざるを得ないだろう」という歴史感覚を、双方が抱いていることは間違いない。

軍事的なせめぎ合いではなく、経済面でしのぎを削るという場面への移行が暗黙の前提となっているのだろう。そのためにアメリカが繰り出した最初のジャブがTPPという路線なのかもしれない。

ここで問題となるのは沖縄の位置づけである。なんといっても沖縄の基地群は、封じ込め政策が本当に終わりを告げるのかどうかの試金石だ。オスプレイの配備や普天間の県内移設と実質的強化が強行されるようなら、言葉とは逆に「封じ込め」戦略は強化されると判断せざるを得ない。

米中間のエールの交換に対して、日本政府も日米同盟一辺倒ではすまなくなっている。どういう立場を取るのか、一定の独自の立場を打ち出すのか注目される。


ついでに、風力発電も当たってみた。

日本は風はあるが、地形上不安定で、どうもあまりよろしくないようだ。
しかし世界にはよいところがある。その最高位を占めるのがアルゼンチン南部のパタゴニア地方だ。アンデスおろしが年中吹きすさぶ不毛の大平原、年間平均風速が10メートルを越えるというからすごい。
ここに風車を立てたらどうなるかという試算がある。

風力発電の現状と水素製造の可能性


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二つの州を合わせて80万基の風車を立てる。稼働率はかなり低めに計算されている。
年間発電量は10兆KW、これは日本の発電量の十倍だ。
これで液体水素を作って日本に輸送しようというのが腹積もりだ。

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私ごとき素人は、水素といえばヒンデンブルグ号の爆発とか、福島原発水素爆発とか恐ろしいが、港の発電所に運搬船が横付けしてそのまま発電に使われるようなので、心配はないようだ。問題はコストだろうが、魅力的な提案だ。

赤旗で九州発電の事業計画が紹介されている。
九州発電といっても鹿児島県のローカル会社。
ここが県内の河川と農業用水路を利用して発電事業を行うそうだ。
①すべて水力発電で、合計40ヶ所の発電所を建設。
②合計の最大出力は2万4千KW。
③すべての電力は九州電力に売電。年間20数億円の収入を見込む。
④事業費は240億円程度。当面3年間を第一期とし120億を投じる。

皮算用では10年で元が取れることになる。小規模発電のよいところは、土砂流入による経年劣化が少ないことで、廃棄費用も想定せず永久的に使用可能だ。

問題はその規模で、24メガでは電力需要の一定部分をまかなうというところまではならない。

小川 誉久さんによれば、福島第一原発の6機全体の合計出力は4.7ギガワット、年間発電量は33テラとされる。

また、地元の熱意に支えられる側面が強いから、限界集落のようなところでは後継者が心配だ。

先日テレビで十勝の地元農協が運営する水力発電所が報道されていた。戦後開拓に入った農民が、「村にも電気を」、と金を出し合って建設したものだという。60年を経ていまだに顕在なのに驚いたが、それを支える農家の人々がかなり過酷な犠牲を払っていることが強く印象に残った。

とにかくこういう動きが出てきたことに注目したい。採算が取れるというのが何よりの朗報だ。こういうニュースを報道した赤旗にも敬意を払いたい。


自分で言うのもなんだが、医者という人種は自分は頭が良いと思っている。それはカラスの勝手だが、困るのは一を聞いて十を知り、百しゃべる連中がいるということだ。
理路整然、とうとうと述べるが、所詮誰かの理論のオオム返しにすぎない。まさにオオム真理教だ。どちらかというと外科系(メッサーザイテ)にそういう手合いが多い。

ある先生が司馬遼太郎の三文小説を二、三冊読んで、「司馬は現代におけるマルクスだ」とのたまうのを聞いたことがある。私が笑っていたのはあきれていたからだよ、君。

そういう連中に限って、十聞こうとしない。十聞いても百知ることにはならないし、楽して受けを狙うには間尺に会わないからだ。
しかしその頭の良さは、普通は側頭葉のできの良さでしかない。スポーツ選手が小脳の出来が良いのと同じだ。
本当にできの良い選手は前頭葉をたっぷり使っている。1回反省回路に回すのだ。これが頭を使うということだ。
それにはやはり十聞くしかない。

ILOが発表した世界の若年層の雇用情勢に関する報告。
世界全体で失業者数が7460万人、失業率は12.7%に達するそうだ。「人生、右を向いても左を見ても、真っ暗闇じゃござんせんか」と鶴田浩二の歌の文句が浮かんでくる。

といってもかなりデコボコはある。地域別に見ると、良いのは東アジアで9.4%、悪いのは中東・北アフリカでそれぞれ27%、28%となっている。東アジアというのは中国と韓国のことで、日本は「先進国」枠に括られている。これが18%だ。

この数字を見て真っ先に感じたのは、「ギリシャ怠け者」論はこの数字を説明できないだろうということだ。事態はそんなに単純じゃないぞ。

ついで感じたのは、この数字を政治と連動させると、一番ひとい中東・北アフリカでもっとも青年運動が盛んで、ついで先進国・EUということになる。つまり若者の失業は政治的安定度を著しく損なうということだ。


この表にはラテンアメリカの数字は載っていないが、おそらく10から15%のあいだだろう。ラテンアメリカの政治状況がかつてなく安定していることは、失業率からも説明できる。
ついでに言えば、ラテンアメリカの中でも新自由主義にいまだに固執するコロンビア、メキシコ、チリで失業率が高いこと、それが政治的不安定を呼んでいることも説明できる。
まさに青年の失業率はその国の政治的不安定性の最高の指標のひとつということができる。15%が危険ライン、20%が暴動ライン、25%が革命ラインである。

こういう指標があるということを初めて知った。
財務省統計で、話はちょっとややこしいが以下の通り

政府や企業、個人が海外に保有する資産から、海外勢による対日投資(負債)を差し引いた対外純資産残高

これがなんと253兆円の貸し越し。世界各国と比べるとダントツのトップ、2位の中国の2倍に達する。100メートル走ってゴールしたら中国はまだ50メートル近辺ということだ。アメリカは円換算でマイナス201兆円、後ろ向きに猛烈なスピードで走っていることになる。

21年連続で世界一ということだそうだ。すごいものですね。これで円高にならないほうが不思議。

対日投資を引かない海外資産残高は582兆円、これが国内投資に回れば、今の日本はずっと変わっていたはず。

民医連で「健康権」なるものがまたぞろ持ち出されていて、「それはおかしいよ」と書いたばかりだが、赤旗の広告を見ていたら、どうやらそのネタ本らしいものがあった。
井上英夫氏の「患者の言い分と健康権」という本だ。
たしかこの人は、私の現役時代にもチョイチョイ文章を書いていたが、論理構築が安易な人で、まさかこのレベルの人が民医連の「御用学者」になるとは思わなかった。

だいたい、宣伝文句を見ただけでも、支離滅裂だ。

医師は人権のにない手にも人権侵害のにない手にもなりうる。(なんじゃこりゃ?)
人権として医療を保障する立場で、(医療が人権か? 主語は誰だ?)
身近な「患者と医師の関係」から、…など幅広く論じる。(そういうのを「床屋談義」という。そんなところから語っちゃダメだよ)
21世紀を健康権の世紀にと訴える一冊。(無内容な打ち上げ花火)


しかしやっとのことで非営利・協同を克服したと思ったら、またですか。ちょっとは自分の頭で考えたらどうですか。

もしどうしても「健康権」を使いたいのだったら、それは憲法13条の幸福追求権の一部としての「健康追求権」として定置されるべきでしょう。
13条と25条の関係はいろいろあろうと思いますが、いずれにしても健康追求権は生存権思想から直接導き出されるものではありません。

13条型人権と25条型人権の思想的相違は、私が医療生協の「患者の権利の章典」と対決した最大のポイントであり、今後とも医療生協ある限り(医療生協から見れば、民医連ある限り)最大の対決点になっていくでしょう。

さすがに私も、もうガチンコやる気はありませんが、民医連幹部の皆さん、少し自分の頭を使ってください。最低、真田是さんのパンフでよいから読んでください。

道AALA総会が終わって、ひと段落。また勉強再開。まずはたまった赤旗の固め読み。
24日の国際面。清華大学の劉教授へのインタビュー記事。

結論A: 米国はかつてのような中国封じ込め政策はとれないし、とらないだろう。
根拠1: 30年にわたる積み重ねの中で、両国は相互協力の関係を築いた。
根拠2: 米国にとって中国は「旧ソ連型の国」ではない。軍事的、イデオロギー的に米国に挑戦し、対立するという路線はとっていない。

結論B: 米国は中国を手ごわいライバルと見ているが、中国と戦うことを避けようとしている。
根拠1: 米国は中国の増強を脅威とみなし圧力をかけている。しかしこれは一種の「戦略的本能」に過ぎない。
根拠2: 米国は軍産複合体国家であり、軍事産業の維持は至上命題だ。そのために周辺の「脅威」を煽って武器輸出を行うのは「戦略」である。過剰反応する必要はない。
根拠3: 対中緊張強化は米国の「アジア回帰」政策と関連している。貿易赤字の克服のためにアジア市場の獲得をもとめている。中国を排除するTPP構想はその一環である。

大筋では間違いはないが、実体としてはもう少し緊張をはらんだ関係にあると見るべきだろう。
とくにASEAN諸国との関係悪化、切断は即中国の孤立化に結びつく。南シナ海問題の深刻さが北京にはまだ理解されていないようだ。

何回聞いても合わない演奏家というのはいるもので、その辺がよく分からない。
私個人の性格としては割りと誰とでもあわせられるほうだと思っているが、その割りに好き嫌いは多いのかとも思う。
とにかく合わない演奏家の代表はリヒテル、アルゲリッチ…
この二人については自信をもって「合わない」と断言できる。はっきり言って嫌いだ。美意識に共通するものがない。ポリーニとクレーメル、たぶん嫌いだと思う。
嫌いというほどではないが、指揮者のサバリッシュとスウィットナー、ピアノのグルダ、ブレンデルなど「どこか良いのさ?」という感じだ。ウィーンフィルとやっているバーンステインも感心しない。アクが浮いている感じだ。アバドも気が抜けたビールみたいだ。
最近、ブリュッヘン、アーノンクールらを先頭に古楽系の指揮者が結構でしゃばっているが、正直こっちへ来ないでほしい。
顔さえ見ないですむなら目下はムーティがよい。年取ってからの小沢も悪くない。いずれツィメルマンが振りはじめるだろうから、それに期待しよう。

Ⅳ ラテンアメリカ: リーマンショックからの回復

A 左派政権の成果

6月にペルー大統領選挙の結果を報告した。左派のオジャンタ・ウマラ候補が、右派のフジモリ候補を僅差で破り勝利した。そのとき好景気にもかかわらず左派候補が勝利したのはなぜか。これはオジャンタ・ウマラの勝利というよりは南米諸国連合(UNASUR)の勝利と呼ぶべきだろう。

ペルーでオジャンタ・ウマラの大統領就任式が行われ、UNASUR首脳が会した。首脳会議ではドル危機にたいして強い警戒感が示された。
なかでも南米唯一の親米国となったコロンビアのサントス大統領が、「米国の自体に傍観者であり続けることはできない。反帝国主義でもなく、反米主義でもなく、実際的な結論として」米国の行動は無責任だと発言し、周囲を驚かせた。
コロンビアの態度変更を受けたエクアドルのコレア大統領は、南米独自で資金を融通しあう地域準備基金や、独自通貨で貿易決済を行う地域決済システムの確立などを提案した。

 

国連の中南米・カリブ経済委員会によると、

①失業率は03年の13.4%から10年の7.9%に減少した。減少率は41%ということになる。

②2010年の貧困層は1億7700万人・31.7%、極貧層(必要最低限の栄養が取れない収入)の割合は13.1%となった。貧困・極貧の規定はドル換算で行われているから、現地平価が為替相場で過小評価されている可能性もある。

(これでもひどいが、1990年以降では最低の水準である。1990年には貧困層が48.4%、極貧人口は22.6%だった。貧困人口の数は2002年に過去最大の2億2500万人に達した)

③ジニ係数は過去10年間で9%低下した。(ものすごい低下率だが、これでも南米は世界一所得格差が大きい地域だとされる)相対的貧困率はこれよりも低く、生活実感としての窮乏感は数字以上に改善していると思われる。

 

これがUNASURの実績だとすれば、それに背を向けて対米従属と大企業優遇の経済政策を続けてきたペルーでも、路線転換を求める声が高まることは自然の流れだろう。「失われた10年」と「絶望の10年」がその帰結を赤裸々に開示したのだから、この10年間に相次いで誕生した革新政権は、相当長期間にわたって支持され続けるだろうと思う。
ただしその革新政権も、まだ金持ちの懐に手を突っ込んで正当な税を徴収するところまでは至っていない。それが2008年におけるラテンアメリカの状況だ。

 

B ベネズエラとエクアドルの経済状況

アメリカとベネズエラ、国民が感じる「幸福感」

米ギャラップ社の世論調査で、国民が感じる「幸福感」によって国を順位付ける調査結果を発表。驚いたことにベネズエラが世界第5位に入った。インフレ率が2
7%に達する中で景気が低迷するベネズエラがなぜ?、と多くの人がいぶかしんだようだ。

しかし、人口に占める貧困層の割合が70%から26%にまで減り、大学進学者が倍加するという社会政策の成果があがれば、むだな経済成長はなくとも国民生
活は活気付くことが明らかになったともいえる。

この間の小泉改革の中で、GDP成長と国民生活の乖離が明らかになった。GDPの持続的な成長にもかかわらず、国民生活は貧困化した。GDPは経済成長率
よりも国民搾取率と考えられるようになった。ベネズエラの例は現代社会におけるGDPの持つ意義を逆の方向から明らかにしていると思う。

ベネズエラという国は二重の意味で特殊な国である。
まずは石油で食っている国だという特殊性である。GDPの大半を石油関連が占めてしまうので、それだけでは経済指標にならない。原油価格が半分になればGDPも半分になるのである。
第二に、チャベス体制の下で一種の金融鎖国政策がとられていることである。こういう国ではドルは「闇ドル」として流通するしかないし、輸入産品がえらく高くなることも間違いない。そういう面もふくめて基礎生活レベルで見ていかなければならないのである。

まずはチャベスというより、こういう石油オンリーの国では政府の強い経済介入が必須であることを認識しなければならない。

ベネズエラは30年前の石油ブーム(日本から見ればオイルショック)のときに大々的な設備投資をやって、その借金が貯まり大変な思いをしたことがある。

リーマンショックの後、ほかのラテンアメリカ諸国の景気は回復したのに、ベネズエラだけが立ち直れない、と鬼の首でもとったように言うが、この図を見れば、2010年に強い歳出抑制策をとったのは当たり前の話で、やらないほうがおかしい。

ラテンアメリカ諸国で国民一人当たり所得を見てもあまり意味がない。貧富の差がべらぼうだからである。貧困率が最も正確に庶民の生活水準を規定すると考えるべきである。かつて石油ブームの頃、首都カラカスの下水にはヘネシーが流れているといわれた。

資源輸出国だから、基本的には仕事がない。失業が当たり前である。富を配分し、仕事をつくり、国民全体を豊かにするためには公共投資しかない。したがって政府支出が景気と経済成長をもろに規定する。こういう国と政府をどのように運営すべきだろうか、そういう問いかけを常に自らに課しながら、経済分析をしないと意味がない。

 

C) もうひとつのラテンアメリカ

ラテンアメリカのなかでもアメリカ追随、ネオリベまっしぐらの路線を走っている国がある。それがメキシコだ。
メキシコに関してはメキシコ麻薬戦争 列伝の中で、戦争の真の敵は貧困だと書いたが、今もなお事態は深刻化しつつある。

メキシコの政府機関「全国社会開発政策評価会議」が7月末に発表した報告が赤旗で報道されている。

貧困層(独特の定義で、国際統計との比較はできない)が、5年にわたるカルデロン政権の下で4470万から5770万に増えたとしている。人口比で見ると43%から51%への増加である。
とくに深刻なのは65歳以上の高齢者で、低所得者の割合が77%に達しているということだ。

弱肉強食の論理は社会的弱者により厳しい条件を突きつけることになる。しかしその数字はあまりにも厳しい。国中が姥捨て山になっているということだ。
これでは長生きする意味がないから、みんなギャング団に入って花と散るのだろう。

 

メキシコで農業崩壊の危機

TPPとの関連で必ず引き合いに出されるのがメキシコ農業の荒廃。

NAFTAでアメリカの農産物にすっかりやられて主食であるトウモロコシが自給不可能になった。生き残った農場も手入れが行き届かない状況、そこに過去70年間で最悪の旱魃がやってきた。

北部高原地帯のチワワ州は乾燥した半砂漠地帯ながら、灌漑農業に支えられてメキシコ農業を支えてきた。しかし昨年の降水量は例年の3割以下。主食トウモロコシの生産は320万トンの減少、家畜6万頭が死んだ。

現在でもトウモロコシなど農産物輸入額は210億ドル(約2兆円)であり、今後予想される国際価格の上昇を織り込めば、それが跳ね上がるのは必至だ。

灌漑農業は一端破壊されれば、新たな水源の確保を含め、復興はきわめて困難である。天災は必ず来るが、それを劇症化させるのは人災である。メキシコでまさにそれが表現されているのではないか。

 

C)民衆の困難の実態

 OECDとILOが、連名で「雇用」を訴えている。この中で以下の点が明らかにされている。

*主要20カ国では08年金融危機以降、2千万人があらたに失業した。
*現在の雇用情勢が続けば、来年までにさらに2千万人が職を失う。
*世界の失業者は世界で2億人。これは戦前の大恐慌に匹敵する数だ。

ギリシャの債務削減

今年になって1月に債務削減案がまとまった。元本を50%削減した上で満期30年の長期国債に交換するというもの。民間側の損失負担率は利子収入の減額分も含め、65~70%に達した。

発動された場合は、損失を補償する保険商品「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の支払いが行われる可能性が高く、影響は限定的。

これを受けたユーロ圏諸国は、ギリシャへの1300億ユーロに上る第2次支援で合意。

ギリシャ国債の利回りは10年物が年30%程度で危機水準の「7%」を大きく上回る。「利払い負担で国家が破綻しかねない」(民間エコノミスト)状況は続く。

ドイツやオランダなどではギリシャの「デフォルト容認」論もくすぶっている。欧州安定メカニズム(ESM)の融資能力拡充についてもドイツは強硬に反対している。

以上の経過を見ると、ギリシャの経済危機が当初の予想以上に深刻であることが分かる。
結論ははっきりしているので、もはや緊縮政策は無理だ。投資が必要だ。それも思い切った投資が必要だ。
それと同時に投資家に対する規制が必要だ。
両方ともドイツの大企業にとっては最もやってほしくないことだろうが、それをやらないと政治的にも大変なことになる、という認識は生まれつつある。

ギリシャ、何が“緊縮”されるのか

ギリシャ債務危機に関しては、もっぱら先進国や銀行の対応ばかりが報道されています。そういうニュースを聞いていると、ギリシャは身の程知らずに贅沢してきたのだから、多少の我慢はやむをえないみたいな気分になってしまいます。

「新メモランダム」の緊縮リスト

A.給与

①基本給の22%引き下げ。初任給の10%引き下げ、つまりこれから就職する人は32%の引き下げとなる。

②賃上げの2015年までの凍結と定期昇給の無期限停止。

③正規雇用のパートタイム化の容認。

B.年金と社会負担

①年間3億ユーロの年金圧縮。

②企業主の社会保障負担の2%削減。民間企業年金基金(IKA)への企業主負担をさらに3%削減。

C.公務員、旧国営企業労働者、銀行従業員

①終身雇用制の廃止。今年さらに1万5千人の削減。2015年までに15万人にまで削減。

②契約労働者の解雇。契約の非更新。「5人退職に対し1人採用」のルールの適用。

③特別加算廃止により、総額6億4千万ユーロの削減。

④各種の公的機構、施設の2012年6月までの閉鎖。

D.2012年度に行われる付加的措置

①医療セクターの縮小。医薬品費の11億ユーロ削減。病院の医師に対する時間外手当を5千万ユーロ削減。

②政府の活動費および消費支出を3億ユーロ抑制。公共投資プログラムの4億ユーロ縮小。

③教育文化施設を閉鎖し、2億ユーロを削減。

④国防のための装備に対する支出削減。

 ギリシャは緊縮財政を3年以上続けている。GDPは5年連続の低下で、11年にはついに6.8%にまで達した。誰が見てもこれ以上の緊縮は不可能だ。それにもかかわらず、財政赤字・経常収支ともにまったく改善の兆しを見せていない。

これ以上の緊縮政策の継続が有害無益であることは誰の眼にも明らかだ。

D) 事態は政治化している

ユーロ危機を大企業の立場から解決するか、民衆の立場から解決するか、フランスの大統領選挙は一つの転換点となるだろう。支配層は苦しみの先にどんな展望があるのかを示すことが出来ない。

ノルトライン・ウェストファーレン州の州議会選挙で、与党CDUが惨敗した。ロイターによれば、CDUの得票率は26.3%にとどまり、2010年の選挙の35%近くから大幅に低下。第2次世界大戦以降で最悪の結果だという。
直前の世論調査での支持率が31%だったから、最終盤に地すべり現象が起きたことになる。やはりオランド効果が大きいのだろう。

訂正一つ: 去年7月にブログにこう書いた。

「ギリシャ支援」と言わないで欲しい 
ユーロの発想そのものを否定するわけではない。しかし金融資本の好き勝手を抑える術を持たずに走り出せば、いずれこうなることは分かっていたはず。
打つ手は打った。これでだめならギリシャをいったんデフォルトに追い込み、ユーロ圏から離脱させ、平価の思い切った引下げを断行するしかない。ギリシャはそれでよいが、残された大銀行には、自業自得とはいえ膨大な焦げ付き債権と破産の道が広がっている。
これを機会にトービン税やその他の規制により金融資本の暴走を抑えることが必要だ。というより、そこに「もうひとつの世界」とつながる鍵があるのかもしれない。

 ということで、昨年7月にはユーロ離脱とデフォールト宣言という選択肢があったかもしれない。しかしその後のイタリア、スペインの動きを見ればもはやその可能性はない。ハゲタカどもはもはやギリシャ一国だけではなく、ユーロ圏諸国を一からげにつぶそうと狙っているのである。

 

B)投機資本による撹乱

ロンドンのクジラ

JPモルガン銀行が過去1カ月半で20億ドルの損失を計上したと発表。最終清算後には40億ドルに達するとの情報もある。「ロンドンのクジラ」と呼ばれる投機ファンドが、ギリシャのクレジット・デフォルト・スワップで失敗したことが原因とされる。

巨額の損失を出した経過が具体的にされていないので、事件の全貌は依然として闇のなかである。

なかでもとくに深刻なのは、ギリシャ国債に手をつけて多額の損失を生んだというウワサだ。元々、ギリシャ国債にからむCDSの主要販売機関はゴールドマン・サックスとモルガンスタンレーだった。ギリシャ債務危機に火をつけたのも、ガソリンをかけたのもアメリカのメジャー金融機関ということになる。これは最大級のスキャンダルとなる可能性がある。

その結果が「米国トップ0.1%の超富裕層が約46兆ドルの富を抱えている」という結果になっているのだ。

EU圏域では、国境を越えた課税逃れが年間25兆円となっている。このため投機の規制、市場の透明性の確保、実体経済の保護が迫られている。

最近では原油など原材料の価格を組み込んだ金融商品(上場投資信託:ETF)などが出回っており、国際決済銀行(BIS)では実勢価格との乖離傾向が強まっていることに警鐘を鳴らしている。

あの竹中平蔵は、経済財政・金融相だった当時、「上場投資信託は絶対もうかる」と発言し、後に謝罪した。

ヘッジファンドとは

ヘッジファンドというのは元々は保険の代理店みたいなもので、貸し倒れになったときに備える保険を扱っていた。ところがこの保険そのものに値がついて売買されるようになったから話がややこしくなる。

いわば企業の不人気投票みたいなもので、不人気なほどその保険の値は上がることになる。

商品が直接売買される商品市場、会社の信用が売買される株式市場についで、リスクが売買されるヘッジの市場が登場するようになった。さらに通貨の変動相場制移行に伴い為替市場も巨大化し、これにもヘッジ市場が関与するようになった。

ところが今回のロンドンクジラでも分かったが、この市場は非常に閉鎖的で謎めいている。例えて言えば鉄火場みたいなもので、とても堅気の人が手を出すようなマーケットではない。

しかもヘッジという性格上、一般的には禁じられているカラ売りに近い効果を示すので、その肥大化は一般市場に対して撹乱的な要素が強い。したがって規制の対象とすべきである。

巨大銀行の直接支配へ

10年ほど前までこの世界は、勝負師の世界だった。しかしそこに巨大な利益の源があることに気づいた巨大金融機関がなだれを打って参入した。ソロスは早々に足を洗い、今では善人面して遊んでいる。

最初は証券会社、さらにJPモルガンのような堅気の商業銀行まで加わるようになった。

アメリカでは銀行が直接自分の金を証券投資することは禁じられている。しかしヘッジというのは、そもそも貸し倒れ保険みたいなものだから、「これは投資ではありません。安全対策費です」といいぬけることができる。

オバマ政権が打ち出した銀行の投機資本への投資禁止策は、計画の立案者の名をとり、ボルカー・ルールと呼ばれている。目下議会で審議中だが、法案反対の先頭に立っていたのがJPモルガンの社長だった。

彼の反対の理由はこういうことだ。

たしかに以前は指摘されるような傾向もあったが、リーマンショック後は各金融機関とも襟を正し、やばい商売には出を出さなくなったので、このような法案は不要だ。ヘッジも、貸し倒れ対策上必要な範囲にとどめている。

それがウソだったことがばれてしまったわけだ。この事件はボルカールールの成立に手を貸す結果となった。

今日の国際的な経済危機、金融危機はその根源を辿れば国際投機資本に行き着く。国際投機資本への有効な規制こそが、経済の再活性化と安定化のために避けて通れない課題となっている。

そういう点で、今回のロンドンクジラは世界の経済をルールあるものに再建するための救世主だったのかもしれない。

 

このなかでイギリスの金融資本の荒業が報道された。さすがはサッチャリズムの本家、やることが半端ではない。

①欧州最大手のHSBCが全従業員の1割に当たる3万人を解雇した。このリストラで20億ユーロが浮いた。ロイズTSBも従業員の14%を解雇した。欧州各国の金融機関の人員削減を合計すると6万人を超える規模となっている。

②HSBCの上半期利益は前年同期から16億増えて62億ユーロとなった。HSBCがリストラ計画を発表した日、株価は4.5%上昇した。

③ロンドン金融街で昨年度158億ユーロが重役+トレーダーに支払われた。これはリーマンショック直前の水準と比べ23億ユーロの増加に当たる。

 

これに対抗して金融取引税導入の動きが本格化してる。欧州議会が11年3月に金融取引税の導入を求める決議を採択した。欧州連合の試算によると、

1.域内27カ国の金融機関がかかわる株式と債券の取引、デリバティブ(金融派生商品)に限定して徴税する。
2.株式と債券には一回の取引ごとに0.1%、デリバティブには0.01%を課税する

という条件での見積りの結果、810億ユーロになる。

これに続き、フランス下院でも同様の決議が採択された。
その内容は
①すべての金融取引に0.05%を課税する。
②すべての株式、債券、金融派生商品を課税対象とする。外為取引も課税する。
とのことで、これによりEUレベルで2兆円の税収が見込まれるとしている。

Ⅲ.ユーロ危機

A)ユーロ経済圏の矛盾

リーマンショックは金融危機だった。金融危機から実体経済の崩壊が起きた。その回復過程で大量のドルが発行され、国債・為替相場の動揺が起きた。金融危機は膨れ上がった信用と投機資本の横行に原因があるが、その根底には長年にわたる貿易不均衡と、それをドルの発行でしのぐという構造がある。

サブプライムローン問題はかなり分かりにくいので少し解説する。


サブプライム: サブプライムとは銀行のつけた呼称で、収入が少なく返済能力の低い階層の人々のこと。

サブプライム・ローン: 銀行はこの人たちに住宅ローンを貸し出した。これをサブプライムローンという。当然、貸し倒れリスクが高い分だけ利息も高くなる。

投資銀行の犯罪: 投資銀行は住宅ローンの債権を証券化し、「債務担保証券」(CDO)という紛らわしい名前で売り出した。このような"金融商品”はジャンク債(劣後債)と呼ばれ、普通は素人は手を出さないものである。

格付け会社の犯罪: しかし、投資銀行はこれを隠して優良債に紛れ込ませ、"利回りの良い優良債”として売り出した。一種の金融詐欺である。そして大手格付け会社はそれと知りつつ"毒入り債”に高格付けを与えた。これも一種の金融詐欺である。

その結果、世界中の投資家がこれを優良債として売買した。

しかしアメリカの住宅市場が低迷するとサブプライム層は次々と住宅を手放した。アメリカでは住宅を手放せば、住宅ローンは解消されるので、膨大な貸し倒れが出現した。

サブプライム・ローンを購入した投資家は膨大な損金を計上し、連鎖倒産することになった。

しかし投資銀行(リーマン・ブラザース以外)は政府資金の投入を受け、命をつないだ。格付け会社には何のお咎めもなかった。信用したほうが悪いのである。

米国政府は銀行を救済するためにドルの大量発行を行った。それは国債の発行と連銀による買い取り(QE2)を通して行われたが、それは膨大な債務として積み上がった。

アメリカ以外の国では、財務内容の悪化は国債の格付け低下と国債利回り上昇をもたらした。資金確保のためには外貨建て国債を発行するほかないので、対外債務の増加となり、債務危機を招いた。

 

今回のギリシャ危機はユーロという通貨の危機だが、本質的にはリーマンショックの波及効果である。

ギリシャはこのまま行けば“アルゼンチン”だ。しかし母体がアメリ カ・ドルとユーロでは格が違う。ギリシャのアルゼンチン化は即、EU圏内大銀行の倒産、ユーロシステムの崩壊につながる。

ユーロ危機で銀行は2千億ユーロの国債関連損失を計上することになる。さらに危機国との取引に伴う損失を含めれば3千億ユーロに達する可能性がある。

IMFは危機回避のためには資本増強しかない。自力調達ができなければ公的資金の注入を、と訴えている。ことの本質はギリシャ支援ではなく、銀行と投機資本への支援 なのだ。間違いないのは、ギリシャの民衆は決して救われないということだ。


国債の格付けが下がると、国債のリスクが高まり、リスクが高まれば利率は上がります。欧州の銀行は国債を購入するというかたちで、 それらの国に貸し込んでいましたが、利率が上がれば、額面に対する実質価格は割り引かれることになります。この差額が銀行にとっては損失処理の対象となり ます。

 構造的危機は先送りされただけで解決したわけではない。マーストリヒト体制はドイツにだけうまい汁を吸わせる仕掛けになっている。貸すときには国境なし、 儲けるときも国境なし、返すときだけ国境ありというのは、弁つきピストンと同じ原理である。一見金も商品も往復運動しているように見えるが、実際の流れは 一方向でしかない。

ユーロ圏の経済・金融・財政再建のためには、スティグリッツの11年8月の発言が非常に参考になる。

1.事態の解決法は公平な経済成長を実現することだ。需要を喚起し、高い成長を実現し、より良い経済環境を作ることで赤字を減らすことだ。

2.EUは公平な経済成長を回復するためには連帯基金「ユーロ共同債」を創設すべきだ。当面は諸国家をまたがる債務再構築だ。

3.現行の救済策は、“多額の資金を貸し込んだ欧州諸国の銀行の保護”にすぎない。国際決済銀行(BIS)規制は何の役にも立たず、むしろ資金の退蔵を進めるだけである。

4.財政の長期的健全化のために必要なのは、課税構造の再構築である。

Ⅱ 世界を襲う失業・貧困の波と不平等の拡大

A 米国における貧困の実態

米国はこれまでも双子の赤字といわれる貿易赤字と財政赤字を抱えてきたが、GDPの上昇と連邦債の発行で補ってきました。しかし08年のリーマンショックを気にGDPが落ち込み、財政赤字幅が一気に拡大しました。

一方で貧困者の数は激増しています。米国勢調査局の国民生活調査によると、一世帯の年収は4万9千ドルで、昨年に比べ2.3%の減というから相当なもの。円にすると78円換算で390万円、日本より低くなる。日本の世帯あたり収入は400万円くらいだったはず。しかし貧富の差が激しいと平均値はあまり意味を持たなくなる。

ついで貧困者比率。米国統計では4人家族で2万2千ドルを貧困ラインとしている。円で言うと170万円、月額14万円、1日1人1200円、である。これは貧困ではなく飢餓ラインである。

フードスタンプの受給対象者はもう少し広く、4人家族で月収2400ドル以下となっているが、日本の生保基準より厳しい。しかも丸ごと保護ではなく食料費の一部が補助されるに過ぎません。

貧困層人口は4600万人。これは国民の7人に一人に相当する。まさに貧困大国だ。しかもこの3年間で1.6倍に増えている。母子家庭の貧困率は32%に達している。

民間世論調査機関の調査では、米国の全世帯 の2割に当たる約6200万人が、資産ゼロか負債を抱えている。別の調査によれば、伸び悩む年収と物価高を乗り切るために「必要な物しか買わなくなった」米国人が70.5%、食費を抑える人も42%という高率に達している。

ティーパーティの財政縮小の主張は、暴動覚悟の狂気の沙汰だということが分かる。

B 米国における富裕層の実態

米国トップ0.1%の超富裕層が約46兆ドルの富を抱えている。日本円にすると4千兆円という、途方もない額になる。日本のGDP9年分、国家予算50年分だ。しかもこの富は今後10年間に倍増すると予想されている。ということは毎年400兆円づつ積み増されていくことになる。さらにオフショア資金は、今後10年間で100兆ドルを超える見込みだ。(WSJ日本語版)

ちなみにこの調査結果では、日本の富裕層が米国に続いており、現在、10兆ドルの資産は 2020年までに約19兆ドルに膨らむものと予想される。

法人税は9%以下に激減した。米企業の3分の2は税を納めていない。タックスヘイブンへの資本移転や生産拠点の海外への移動のためだ。

C バフェット発言

政治家たちは『痛みを分かち合うこと』を求めてきた。だが、そのなかに私は含まれていなかった。富裕層に重税を課すと、投資意欲を削ぎ雇用にマイナスに働くと叫ぶ人がいる。それは嘘だ。20世 紀末の20年間、私に対する課税率はもっとずっと高かったが、投資意欲が削がれることはなかった。逆に富裕層減税の導入後には、雇用創出数は減少している。これが事実だ。

D 9月のオバマ経済演説

国内経済に関する部分は、読んでいて胸がすく思いがする。どこかの国の首相の胸くそが悪くなるような美辞麗句とはえらい違いだ。

「少数が豊かで多くの国民が生活苦を強いられる国を選ぶのか、全国民が公平な機会を得て、公平な負担を背負い、同じルールに従う経済に復活させるかの選択だ。問われているのは民主党か共和党かではなく、アメリカの価値観だ」

「アメリカ自らの製造業、技術力を持った労働者、アメリカの国に基盤を置いた持続可能な経済の構築へ向けた青写真を示す」

「海外に労働力を求める企業に税優遇は行わない。減税は国内にとどまり、国内で雇用を生む企業を対象とする。大企業の税金逃れを防止するため、多国籍企業に一定の税を課す」

「国防費5千億ドルを節減する。戦費縮小で浮いた財源の半分は債務返済に、残りは国家建設のために使う」

「大富豪の4分の1が中間層家庭よりも税率が低い。公正な税負担のため税制改革が必要だ。100万ドル以上の所得があるのなら、最低でも30%以上の税金は払うべきだ。減税措置の撤廃も必要だ」30%ねぇ、あほブッシュの前は最高70%なんだけど…

「経済回復への動きがまだ弱いのに、1億6千万人の勤労者への増税を避けることこそ、最も差し迫った優先課題だ。アメリカ国民の98%をしめる年収25万ドル以下の家計の増税をしてはならない」25万ドル=1900万円? ちょっと高過ぎ?

「こうした政策を“階級闘争”だと呼びたいのであれば、そう呼べばいい。億万長者に、少なくとも自分の秘書と同じ程度の税率で納税してもらう。ほとんどのアメリカ人はそれを“階級闘争”ではなく常識と呼ぶだろう」

「金融危機の引き金になった住宅担保証券に対し、不正調査にむけた特別チームを立ち上げる。庶民の金で危ない賭け事をすることはもう許さない」


27日の北海道AALA連帯委員会の総会でしゃべるための原稿です。

「これが世界だ」2012年版

Ⅰ 2011年は、世界にとってどういう年だったでしょうか

A まず、世界の青年たちが立ち上がった年でした。アラブの春に始まり、5月にはスペインでの広場立てこもり行動、夏から秋(現地では冬から春)にかけてのチリとコロンビアの学生の闘い、そして10月にはウォール街占拠行動と、社会を揺るがすような行動が続きました。これが社会の雰囲気を大きく変えつつあります。

B 2011年の東北大震災と原発事故は日本だけにとどまる問題ではありませんでした。「原発ノー!」の声は世界に広がりつつあります。そして核兵器開発に対する拒否の立場も広がり、北朝鮮やイランなどの核開発を押さえ込みつつあります。

C ギリシャに端を発した財政危機、債務危機はユーロ圏全体を巻き込んで拡大し、米国でも債務問題が深刻化するなど世界同時不況となっています。人々はこの不況の波を受け、失業・貧困の犠牲者となっています。

D この不況は国際金融資本の横暴が生み出したものです。人々に緊縮を強いるのではなく、国際金融資本を規制することが必要です。このことの重要さがますます明らかになりつつあります。すでにヨーロッパではそのためのメニューが出来ており、それを実行する政府も登場しつつあります。世界は潮目を迎えつつあるといえるでしょう。

E こうした中で、現在の経済システムに変わる代替案、「新たな国際経済秩序」はあるのでしょうか。それを示唆しているのが、いまラテンアメリカで進んでいる財政主導型の社会改革と経済統合です。逆にアメリカ中心、金融資本本位の現在のシステムをさらに推し進めようとしているのがTPPです。


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