そもそも FX の知識がないと、デレバレッジなど分かりないのですが、そんなことに自分で手を出す気はないので、ついつい面倒になっていました。
しかしデレバレッジが今後の景気を占うキーワードといわれればそうも言ってられません。
FX取引の用語 から引用します。
デレバレッジ(Deleverage)は「非・レバレッジ」ということ。つまり、お金を借りて自己資金の何倍もの投資を行うレバレッジ投資が逆回転する現象、それがデレバレッジです。
レバレッジからデレバレッジへの流れは次のような感じです。
まずは低金利政策や経済成長などの条件が重なってバブルの温床がつくられます。投資家は低いコストで資金が調達できれば、積極的に投資を行おうとします。リスクを取って自己資金の何倍もの投資を行うレバレッジ投資の始まりです。
信用創 造のメカニズムが働き、投資物件にお金が集まってきます。やがてバブルが生まれ、レバレッジを効かせた投資はますます膨らんでいきます。
しかしバブルはいつか弾けるもの。破綻する投資家が出てくると、銀行は信用リスクを警戒して信用収縮が起こります。投資家も損が膨らむので投資を縮小します。すると投資物件の価格はさらに下がり、信用収縮が一段と進むという負のスパイラルが起こります。これがデレバレッジ。
サブプライム問題以前は世界的にレバレッジ投資が盛んになり、あちこちで不動産バブルや株式バブルが発生しましたが、以後はデレバレッジの流れとなり、急激な信用収縮が起こりました。
(この説明では、なぜこのデレバレッジが今日の世界における重大問題となっているかが分からない。分かりやすいのは良いのだが、問題を単純化しすぎている嫌いがある)
日経ヴェリタス より
レバレッジ(leverage)とはテコの意味。金融取引では、信用をもとに自己資本を大きく上回る規模の資金を動かし、高リターンをねらう高リスク手法を指す。こうした取引を反対売買するのがデレバレッジ(deleverage、テコの解消)で、最近の市場混乱を招いた。
レバレッジを効かせた取引の担い手はヘッジファンド。世界の金融・資本市場や商品市場に巨額の資金をつぎ込んだ。
低金利の円を調達し、高金利通貨などで運用する「円キャリー取引」も、レバ レッジ取引の一種。昨年夏以降、サブプライムローン問題の深刻化に伴う信用収縮で多くのファンドが資金難に陥り、デレバレッジを余儀なくされた。
円相場急 騰や証券化商品の急落など波紋が広がり、ファンドに融資していた金融機関にも打撃を与えている。
(この日経ヴェリタスの記述は非常に混乱を招くものだ。デレバレッジ=レバレッジに対する対抗取引という説明はおそらく間違いだろう。また円キャリーまでレバレッジに含めるのは拡大解釈のしすぎだろう)
ということで、意味が拡散しすぎて何のことやら分かりません。要するに借金をして相場を張り、手持ちの資金の数倍の利益を手にする手法のことをレバレッジといい、それをやめることをデレバレッジというのですが、どうやめるのかは千差万別、ほとんど“気分”の問題です。
いろいろなブログを見ても、どうも日本人が自分の環境に合わせて、アメリカの用語を勝手に使いまわしているような気がしてなりません。
元々は08年にアメリカで住宅バブルが崩壊した後の狼狽売り、損を覚悟の投売り、その結果もたらされた資産デフレのことを指しているのではないでしょうか。ただその規模が格段に大きいために、資本流動性の低下が深刻な不景気をもたらしたこと、その速度がべらぼうに速くて、ほっとけばたちまち金融恐慌に至る危険があることが、今日あえてデレバレッジという言葉を使う理由なのではないでしょうか。
もう少し実体を持った議論を知りたいと思い、金融機関のデレバレッジに限定して文献を探しました。
投資銀行危機の実相と今後の方向性 ~デレバレッジと原点回帰のビジネスモデルへ~という日本総研のページがあり、その要約をさらに要約しました。2008年10月の文章であり、それから3年間のあいだにどうなったのかが知りたいので、基本知識だけ教えてもらうこととします。
投資銀行の業態変化
投資銀行(証券会社のようなものと考えてよいだろう)は、資金の借り手と運用ニーズを有する投資家とを、幅広いネットワークをもとに繋ぎあわることが業務の中核的部分であった。ところが、1990年代以降、競争環境の変化と金融緩和の時代が来ると、それだけで商売を続けることはできなくなった。
各社は自己のバランスシートを拡大させて、自己資金で収益を上げるモデルへと重点を移していった。
米投資銀行が空前の利益最終的な投資の受け皿としてアメリカほどの巨大な市場が存
在しないことから、世界の金融資産のアメリカ一国集中状況が続いた。
1980年以降、投資銀行が保有する金融資産の残高が急増した。投資銀行は過剰流動性を背景に、低コストで短期資金調達を行い、高いレバレッジを掛けて証券等に投資を行うことで、高収益を生み出した。
危機の出現
マクロ経済環境が順調な間は問題なかったが、景気減速とともに、このようなビジネスモデルの弱点があらわになってきた。第1は、損失急増の可能性である。保有有価証券が下落すると資産売却が拡大し、さらに価格が下がるという悪循環が生じる。この損失が一挙に広がる
ことが商業銀行と違って投資銀行に特徴的である。
第2は、流動性リスクである。投資銀行は、預金という安定的な調達手段を持たないため、資金調達の大半を市場に依存していたことが致命的であった。証券担保融資による資金調達依存は、株価下落による資金調達の困難を増幅させた。
第3は、過小な自己資本である。自己資本が薄ければ、損失への抵抗力も小さく、債務超過に陥るのも早い。
危機の教訓
1 「新種の恐慌」の可能性預金流出や市場での資金調達難の発生による「古典的な流動性危機」とは異なり、資産価格の低下の速度が異常に早い。
デレバレッジ(レバレッジはずし)による資産投売り (fire sale)が保有資産の価格下落を加速する。これが流動性不足を増幅し、最終的には支払い能力(solvency)の喪失に至る。
2 原点への回帰
今後当分のあいだ、投資銀行の業務からは高レバレッジの仕組みや複雑な金融商品は姿を消すであろう。投資銀行は、資産運用業務や企業のM&A仲介業務など得意分野を生かした経営に特化していくであろう。そして、より実体経済に近い業務に注力することで、原点回帰(back-to-basics)を強めていくであろう。
…だと良いが、その後の3年間、どうなっているのだろうか。すくなくとも、今の時点でいまだにデレバレッジが叫ばれているところを見ると、日本総研の文章の筋書き通りにことが運んでいるようにも思えないが。