ヴァルター・クリーンがピアノを弾いている。クリーンと言えばずいぶん昔の演奏家だと思っていた。かつてウィーンの三羽烏と呼ばれたピアニストがいた。イエルク・デムス、バドゥラ・スコダにグルダだった。彼らと同じ頃にクリーンやアルフレード・ブレンデルもウィーンを中心に活躍していた。1950年から55年頃ではなかったろうか。
ウエストミンスターというレコード会社だったと思う。この会社はどちらかというの二流の演奏家を中心としていた。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団というのはウィーンフィルの並びの楽員たちが組織した四重奏団で、カンパーという第一バイオリンの情緒テンメンたる演奏が売り物だった。ウィーン国立歌劇場管弦楽団というのはウィーンフィルではなくフォルクスオーパーの方のオケという具合。
ブレンデルはリスト弾きという売り出しで、わりと荒っぽい演奏をしていたように記憶している。クリーンで憶えているのは、ユリウス・パツァークの美しき水車小屋の娘の伴奏で、極めてのりの良い音を出していたことくらいだ。
というクリーンとアマデウスSQの組み合わせなので、これは相当古い録音かと思い期待もしていなかった。
ところがギッチョン、きょう日の録音などとてもかなわない音が出る。音の広がりがなくモノっぽい、かすかにプチ音も入る。強音はわずかだが割れる。しかし60年代の録音とはとても思えない。
と思ったら、やはり60年代ではなく1981年録音だった。何でもその年の最優秀録音賞をとったらしい。
これは絶対聞くべきだ。