原油暴落とルーブル危機

二つの不気味な妖怪がうごめきはじめている。原油は50ドルという信じられない安さだ。ふつうならOPECはここまで行かない内に生産調整を始めるのだが、歯止めが効かなくなっている。おそらく投機資本がそれ以上の売り浴びせを行っているのだろう。

ただ、長期に見ればバレル100ドル超というのがそもそもフィクションであり、だぶついたユーロダラーが回って高値を支えていたに過ぎない。

世界不況下のオイル高という状況がそもそも変なのだ。持ちこたえられなくなればこのバブルが一気に消滅する可能性はある。

まぁ、このへんは時の運だろう。大損する人間(例えば三菱商事)が出たとしても知ったことではない。ザマァミロだ。

ルーブル危機はそうは行かない。多分1997年の時ほどではないだろうが、欧米の投資家には相当な犠牲が生まれるだろう。

あの時はロシアの危機がプラジルに波及した。LTCMを始めとする投資家がブラジルの資金を引き出してロシアでの欠損補填に当てたからだ。

ところがロシア危機に比べればブラジル危機のほうがじつははるかに深刻だった。アメリカはあわててテコ入れに動いた。この辺りからIMFの動きは訳がわからなくなって、結局は政策的に崩壊してしまった。

これを機に、投機資本と一体化したIMF・世銀・米財務省のネオリベ政策は、ひとつの終焉を迎えたのである。

とは言うものの、アメリカの基本的スタイルは何ら変更されていない。したがってあの時の火種は依然として抱えたままである。

とくにあの時は比較的堅調だったEU圏の金融機関が、危機を脱したとはいえない状況にある下で、オイル安、ルーブル安がどう結びついていくか、それに市場がどう反応するかはまったく読めない。

最近の経済危機は大抵がソブリン危機の形をとって現れてくる。来年が2008年のリーマン・ショック、2010年のユーロ危機以来の激変の年にならないという保障はない。