日銀の追加緩和が5対4の際どい差で決定されていたことが明らかになった。
これは10月30日の金融政策決定会合の議事要旨が公表されたことで明らかになったもの。
安部首相と「異次元の金融緩和」政策がかなり追い詰められているということが、これからも分かる。
この事について、金子記者の署名入り解説記事。
まず、10月30日の日銀金融政策決定会合で決まったことのおさらい。
1.長期国債の年間買い入れ額を50兆円から80兆円に引き上げる。
2.株式投資信託(ETF)の購入を3倍に増やし、年間3兆円づつ増やす。
3.不動産投資信託(Jリート)の購入も3倍化し、年間900億円づつ増やす。
この方針に対して反対意見が出されたが、金子記者によればそれは二つにまとめられる。
1.金融緩和は円安をもたらし、内需型中小企業に悪影響を与える。
2.実質的な財政ファイナンス(政府予算への財政支援)となってしまう。(正確に言うと、“財政ファイナンスとみなされるリスクが高くなる”という表現)
金子記者はこのうち、2.に焦点をあてて解説している。
金子記者によれば「財政ファイナンス」の問題として下記をあげている。
1.財政ファイナンスは、二重の意味で財政法違反である。ひとつは赤字国債の発効が原則的に禁止されている(財政法第4条)からであり、もう一つは国債の日銀引き受けが原則的に禁止されている(財政法第6条)からである。
2.ただし財政法第4条には抜け穴があり、有名無実化されている。それはひとつは赤字国債発行法であり、条件を決めた上で例外が認められることになった。さらに2012年の公債特例法によって、事実上ザル法となった。
3.財政ファイナンスは、憲法にも違反している。憲法は国の財政処理に国会の議決をもとめている(憲法第83条)が、「異次元の金融緩和」と国債買い入れはこれに違反している。また公債特例法に定められた年度をまたぐ国債の発行は、予算の単年度主義を定めた憲法第86条に違反している。
ということで、今回の解説は「財政ファイナンス」の批判というより公債特例法批判になってしまっている。
この続きがあるかどうか分からないが、この記事だけでは「羊頭を掲げて狗肉を売る」の趣がある、と言わざるをえない。
日銀内部の批判派の趣旨は、「1.内需型中小企業への悪影響」の方にあるのだろうと思うので、そちらをもう少し敷衍してほしいと思う。
内需型中小企業は悪政により三重に痛めつけられている。
長期の不況の中で物が売れない、金融緩和による円安で原料コストが高騰、消費税で利益幅の圧縮だ。
さらにこれで消費税不況が上乗せされれば目も当てられない様となる。
ところで内需型中小企業というのは我が国産業の根幹だ。雇用の9割以上を生み出している。
ここが深刻な打撃を受けるということがどのような意味を持つのか、政府・大企業は考えたことがあるのだろうか。