エグモント序曲の聴き比べ

ロリン・マゼールのエグモント序曲が良い。

最初の聴き比べのきっかけはこの演奏ではない。ティーレマン指揮ウィーン・フィルの演奏があまりにひどくて、「この曲は、本当はつまらない曲なんだよ」と言わんばかりの演奏で、「ほんとうにそんなにこけおどしのつまらない曲だったかなぁ」と思いながら、他の演奏を探しているうちに見つけたものだ。

マゼールがニューヨークフィルを振ったライブ録音で、元の音は良かったのだろうがアップ時に音が壊れてしまっている。音はひどいのだが迫力はすごい。

ニューヨーク・フィルは個々にはうまいのだろうが、オケとして合わせる気はさらさらない。ライブだからなおのことだ。

しかしマゼールの指揮はものすごい迫力だ。音の塊が襲いかかってくるような迫力がある。

かなり前にダウンロードしたものだから、音質がアップされているかもしれないと思って探したら、あった。

ソウルでのコンサートのテレビ放映をエアチェックしたものらしい。その日のコンサートの他の曲もないかと思って探したが、この曲だけだ。この演奏の印象がよほど強烈だったと見える。

我がジョージ・セルの演奏もある。しかしクリーブランドとのものはない。ウィーン・フィルと録音した全曲盤。69年12月というから最晩年のものだ。

ドレスデン・シュターツカペレとのライブ音源(Salzburg 1965)もアップされているが、音質は鑑賞に耐えない。演奏もセルらしくない。Czech Ph. / Szell Salzburg 1963 というのもあるが、さらにひどい。

……なことをやっているうちに、クレンペラー指揮フィラデルフィア管弦楽団という演奏を見つけた。フィルハーモニアの間違いではない。

調べてみると、63年ころ、フィラデルフィアに2週間ほど滞在してコンサートの傍らいくつかの録音を残しているそうだ。何でも録音がひどいためにお蔵入りになってしまったそうだが、最近色々細工して発売になったらしい。

このエグモントはすごい。物置小屋に楽団を詰め込んで演奏したみたいで、残響ゼロ。まじりっけなしの音が詰め込まれている。まるで指揮者の後ろでリハーサルを聞いているようだ。

全盛期のフィラデルフィアサウンドが純生で聞けるというのがすごい。

しかしさすがに塩っ辛い。口直しにアバドを聴く。こちらはシロップを掛けたエグモント。

小沢とボストンというのもある。出だしはおやっと思わせるが、終わってみると印象は薄い。

あったぞ、ヴァントのエグモント。細部まできっちり音を出しながら、低音はズシンと効かせる。やはりヴァントは決定盤だな。エグモントは駄作ではないな。