ソニーの盛田元会長が1992年2月の『文芸春秋』に発表した「『日本型経営』が危い」という文章がある。当時はずいぶん話題になったものだ。

いまいちど、見なおしてみたい。


盛田提言は次のように要約できる。

日本の企業は、国内で横並び一線の蛾烈な競争(過当競争)を行っている。

そこではシェア拡大が至上命題となり、そのために先ず低販売価格が設定され、その価格でやっていけるように適正な利益や必要なコストが効率の犠牲となって削られている。

効率の犠牲となっているものには、長時間労働、低労働分配率、低配当性向、部品メーカーへのしわ寄せ、地域社会への貢献の消極性、環境保護・省資源対策の不十分さなどがある。

これに対し欧米の企業は、製品市場毎の棲み分けが比較的明確であり、競争もそれほど激しくなく、販売価格には適正な利益や必要なコストが含まれている。

欧米からみれば異質なやり方・経営理念をそのまま海外にも適用し、世界市場で競争を続ける日本企業に対する欧米企業の我慢はもはや限界に近づいている。

日本企業に求められているのは、欧米企業と整合性のあるルールの上でのフェアな競争であり、効率の犠牲となっている諸点を十分に考慮した価格設定である。

ただし、これは理想であり、現在の状況下で敢えでどこか一企業が抜本的改革をすれば、その企業はたちまち経営難に陥る。

当面は各企業が手を付けられることから始めるべきである。たとえば、従業員が自由に連続体暇がとれるフレックス・ホリデー、学歴不問の採用制度、頻繁なモデルチェンジの見直しなどである。

曲がり角に立つ日本的経営より


 その上で盛田氏は、企業人は最初のステップとして次のようなことを考えていくべきだとして6項目(要旨)をあげています。

(1)生活に豊かさとゆとりが得られるように、十分な休暇をとり、労働時間を短縮できるよう配慮すべきではないか?

(2)現在の給与は、企業の運営を担うすべての人達が真の豊かさを実感できるレベルにあるのか。貢献している人々がその働きに応じて十分に報われるシステムになっているか?

(3)欧米並みの配当性向を確保するべきではないか?

(4)資材・部品の購入価格、納期の面で、取引先に不満を持たせているようなことはないか?

(5)企業および個々人が社会やコミュニティーの一員であることを認識し、積極的な社会貢献に務めるべきではないか?

(6)環境保護および省資源対策に十分配慮しているか?

トヨタで生きるより


盛田氏は「そんなこと言ったって無理だよ!」という意見を否定しているわけではない。

もっと長期の視野で、「企業というのはこうあるべきではないか? そういうことを目指すべきでではないか?」と問いかけているのである。

今日から見ると、ある意味懐かしいところもある。会社立国というか、企業が日本を支えるのだという自負が感じられるからである。

現在の企業にそのような意志はまったく感じられない。「企業はグローバルなものであり、日本のために頑張る存在ではない」という風潮と、「企業は株主のためにあるのであり、社員のためにあるのではない」という風潮が押しとどめられることなく拡散しつつある。

「日本型経営」の“長所”は抜き取られ、“短所”のみがますます強められつつある。そんな気がしてならない。