あるブログにこういう記述がありました。

1000兆円を超える膨大な国債の残高や、少子高齢化に伴う社会保障財源増しを放置することは、対外的な国の信用の低下や国民の将来に対する不安感 を増幅するであろうことは想像に難くありません。消費税率を据え置いたがために、国債の暴落や金利上昇、将来への不安から生じる消費の落ち込みが企業の経済活動を停滞、もしくは悪化させるというシナリオも十分に考えられるのです。

景気の回復を待って税率を上げるという主張もありますが、引き伸ばしてきた結果が今日の財政悪化の原因でもあることは疑いようのない事実でもありま す。消費税率の引き上げの議論は、企業活動にとってのマイナスの側面がややもすると強調されがちですが、引き上げないことによるリスクや、将来に対する不安を回避するプラスの側面があることも考える必要があります。

何を言いたいのかよくわかりませんが、最近の消費税引き上げ論はここまで無茶苦茶になっているということを示す、ひとつの例といえるでしょう。

社会保障や“将来の不安”云々は付け足しです。消費税は社会保障財源ではありません。言っている本人も相当気恥ずかしく思っているでしょう。

そこを抜いて書き直すと、こうなります。

1.膨大な国債の残高を放置すると、対外的な国の信用の低下を招く。

2.消費税率を据え置くと、国債の暴落や金利上昇を来たし、企業の経済活動を停滞、もしくは悪化させる。

3.(消費税引き上げを)引き伸ばしてきた結果が、今日の財政悪化の原因でもあることは疑いない。

言っているのはこれだけです。

1,は当たり前の話です。だれも違うなどとは言っていません。

2.は「風が吹くと桶屋が儲かる」式の議論で、しかも「膨大な国債の残高を放置する」ことが、「消費税率を据え置くこと」にすり替えられています。

実は同じようなことを高村自民党副総裁が言っています。

増税しなければ市場の信認を失い、国債が暴落すれば打つ手がなくなる

まさに「撃ちてし止まん」、上げないと国が「ジェノバ化」し潰れてしまうかのごとき言い分です。ところがこれに対しては、ソブリン市場の格付けを行うS&P社の担当者が早速反論しています。

再増税がマクロ経済に悪影響を与える可能性があれば、必ずしもソブリン格付けにプラスではない

3.は明らかに事実と異なります。2000年代初頭にプライマリー赤字はGDP比6%近かったのが、リーマンショックの直前には1%ちょっとまで改善しています。その間に諸費税は引き上げられていません。そもそも膨大な財政赤字を作り出したのは、97年の「消費税ショック」によるものです。これは官庁筋もふくめ衆目の一致するところでしょう。

(ジェノバ化についてはをご参照ください)


エコノミストは口をつぐんでいますが、今回の消費税引き上げは、明らかに法人税を引き下げるための財源です。

誰が見たって、国家財政の歳入欄で、消費税の増収分が法人税の減税でチャラになっているのは一目瞭然でしょう。ここが見えないのは、「視野欠損」という病気です。視野欠損の患者がどう力説しても、それは病気の証明にしかなりません。