2014.08.02 しんぶん赤旗 【ワシントン=島田峰隆】


この記事は赤旗の特ダネのようで、いろいろなサイトがこの記事を引用している。


アルゼンチンの債務返済問題をめぐり、債務再編に応じず全額返済を求める米投資ファンドの訴えを認めた6月の米 最高裁判決について、世界の100人以上の経済学者が7月31日、判決は「モラル・ハザード」(倫理の崩壊)を招くと批判し、米議会に対し、国際金融 市場への悪影 響を緩和する法的措置を取るよう求める連名書簡を送りました。

ノーベル経済学賞受賞のロバート・ソロー氏(マサチューセッツ工科大学名誉教授)やプリンストン高等研究所のダニ・ロドリック教授らが呼 び掛けたもので、米シンクタンク経済政策研究所(CEPR)が発表しました。

書簡は、債権者の9割以上が再編に応じているなかで、投機を目的とする一部の米ファンドの主張を認めることは「交渉する道を選択した他の 債権者の既存の合意まで破壊する」と強調。こうした事態を許せば「国際金融市場の機能に甚大な悪影響を与えうる」と懸念を示しました。

また米ファンドは、再編に応じなかった債権者から二束三文で債権を買い集め、債務全額の支払いを受けて大もうけしようとしていると批判。 こうした手法は「金融の不安定化」を招くと指摘しました。

CEPRは「アルゼンチンを債務不履行に陥れた米最高裁の判決は誤りであり、金融に打撃を与えるものだという見解が経済学者の間で広く共 有されている」と強調しています。


元ネタはこれのようだ

Economists Call on Congress to Mitigate Fallout from Ruling on Argentine Debt

冒頭に速報が掲げられており、記事はこれを要約したもののようだ。

以下が本文(拙い訳ですみません)

July 31, 2014

親愛なる国会議員の皆さん、

私たちは、アルゼンチン対NMLキャピタルの裁判の最近の展開に対し懸念を抱いています。

連邦地裁の判決は不必要な経済的ダメージを引き起こす可能性があります。とくに、外国人債券保有者の93%に対するアルゼンチンの債務支払を禁止する命令は危険なものです。

この判決は国際的な金融システムに関して、米国、アルゼンチン双方の不利益となる可能性があります。この問題に関して15年にわたり米国が積み上げてきた債務救済交渉についても同様です。

私たちは、議員の皆さんが今すぐ行動に移り、判決の有害な衝撃を軽減するために立法上の措置をとるようもとめます。

政府は時にさまざまな理由で困難に陥ることがあります。国債の償還を続けることができなくなることもあります。

これは2001年末のアルゼンチンの状況にも当てはまります。何年にもわたる交渉のあと、アルゼンチンは債務再編協定を結びました。債権がデフォルトとなった債券保有者は、その93%が協定に合意しました。そしてアルゼンチンは協定にもとづく債務支払いを続けてきたのです。

判決はこう言っています。「原告への支払いを優先すべきだ。それが実行されないのなら、アルゼンチンは再構成された債権の保有者への支払いをしてはならない」

それはどんな意味を持つのでしょうか。

それは、どんな「持ち越し」(Hold-out)債権者でも、交渉に応じた債権者とのあいだの協定をぶちこわす(torpedo)ことができるということです。

個人と会社は破産法の保護を与えられているのに、そのようなメカニズムは独立国の政府のためには存在しないのでしょうか。

裁判所の判決は、債権者と債務者の和解意欲を著しく低下させます。そして秩序だった再建を妨害し、債務危機の激化をもたらすことになります。

それは、国際的金融市場のはたらきに重大な否定的影響をあたえることになります。国際通貨基金(IMF)がくりかえし警告したとおりです。

 

そもそもアルゼンチンの債権に投資した人々は、デフォルトの危険性を承知のうえで高い金利に惹かれたのです。これは取引です。

国債に投資するときには国債特有のリスクがあります。もし判決がリスクを無視するのなら、それは一種のモラル・ハザードとなります。投資家がどんな危険な投資であってもフル償還を獲得するのを認めることになるからです。

この裁判における原告は、2001年のデフォルトの後、「第二の市場」(ジャンク市場?)でアルゼンチンの債券を買い集めました。買値はしばしば20セント以下だったといいます。

この役者たちは、もし再建案を受け入れたとしても巨額の利益を受けることは可能でした。しかし彼らはそうする代わりに、10年もの長きにわたる法廷戦争を闘いました。

そして、その報酬として1,000パーセントを超える過剰利益を求めたのです。その結果、国家財政が不安定化することも厭わなかったのです。

最近の変化は、アメリカの世界経済の財政センターとしてのステータスにも、直接的な影響を与えています。

発展途上国の国債の多くはニューヨークで取引されています。それらはニューヨーク州法により統制され、ニューヨークに拠点を置く金融機関の運営のもとで行われています。

今回の判決は、途上国政府が債務問題の解決の場所を他所の国に移す可能性を強めることになるでしょう。例えばイギリスとベルギーはすでに、「ホールドアウト」債権者の行動を認めない法律を可決しています。

法廷はそれに加えて、ニューヨークに籍を置く銀行にも規制をかけました。彼らはスケジュールに従って、リストラに賛成した債権者に通常の利子支払いを行おうとしましたが、それは妨げられました。

すでに、銀行は投資家から訴訟を受けています。それはアメリカを拠点とする金融機関にとって大きな不確実性をもたらしました。

アルゼンチンは交渉の意思があることを表明しています。彼らは最近パリ・クラブ(民間債権者グループ)との交渉で合意に達しました。さらに他の国際的な投資家との交渉についても前向きに取り組もうとしています。

議員の皆さん、私たちはこの判決や類似した判決が不必要な害を引き起こすことを望みません。その代わりに、あなた方が適切な立法的解決を打ち出すことを望みます。

Sincerely,

Robert Solow, Nobel laureate in Economics, 1987, MIT Professor of Economics, emeritus

他100名以上



2001年のアルゼンチン債務危機については、アルゼンチン年表をご参照ください。

アルゼンチンに襲いかかるハイエナファンドについては下記をご覧ください。