パガニーニのこの曲が、正式名称不明
以前から好きで、ホーページのテーマ曲にも使っていた曲だが、youtubeでは正式名称が混乱している。
1.ギル・シャハム盤では“作品3の6”
まずは定番演奏とも言えるギル・シャハムの演奏。
うp主は
Sonata no.6 for violin & guitar - andante - Gil Shaham ( Paganini )
と名づけている。説明はない。
これは現役盤からの吸い出しだからうかつにコメントできないのであろう。
そこでCDのクレジットを探してみると、
Paganini: Sei sonate M.S. 27 (op.3) per violino e chitarra / Sonata n.6 - in E minor - Andante
となっている。ついでに絵も載せておく。
このCD収録曲の一覧をみると、
1.作品番号なし、MS.2 のソナタ イ長調
2.作品3、MS.27のソナタ集から1番、4番、6番、
3.作品番号なし、MS.3 のグランド・ソナタ
4.作品番号なし、MS.112のチェントーネ・ディ・ソナタ(ソナタ集)から2番、4番、
その他が収録されていることが分かる。
ということで、
この曲は、日本語でいうと
バイオリンとギターのためのソナタ ホ短調(作品3の6)の第一楽章 アンダンテ
ということになる。
しかし、バイオリンソナタの第何番かということは、これだけでは分からない。パガニーニの作品の散逸状況からすれば、第何番かなどということはむしろ言わないほうが良さそうにも思える。
ところが、うp主は“ソナタ第6番”と称しており、これはいろいろ問題をはらんでいる。
2.作品3の6は「バイオリンとギターのためのソナタ」の6番とはいえない
作品番号を付けるのは作曲者本人であるから、本人が6番といえば確かに6番である。
しかしパガニーニには、本人が作品番号を付けて発表した曲とは別に、かなりの未発表作品があり、それが発掘されている。
それらがマリア・ローザ・モレッティとアンナ・ソレントによって鑑定され、パガニーニの自作と判断されたものがMS番号を付けられて公開されている。
これ自体はきわめてありふれた話だ。バッハ(BWV)、ハイドン(Hob)、モーツァルト(Köchel)、ベートーヴェン、シューベルトなど上げればきりがないくらいだ。
それを差し置いても、作品番号をつけて公表された曲の中でも、この曲は第6番とはいえない。なぜなら作品2も同じ「ヴァイオリンとギターのための6つのソナタ」と題されているからだ。
だからこの作品を通し番号で言うならば、バイオリンソナタ第12番なのだ。ちなみに作品1が、かの有名な「24の奇想曲」である。
3.同じ時期に作られた「バイオリンとギターのためのソナタ」は、他に30曲ある
モレッティとソレントによって真作とされた「6つのソナタ集」がMS.9からMS.13まで5つもある。すべて作品2および作品3と同時期(1805~1808年)のものである。
さらにそれに加えてMS.2(協奏的ソナタ)とMS.3(グランド・ソナタ)などなどという同じ編成のソナタもある。だからバイオリンソナタ第何番という言い方は、かなりナンセンスに近い表現だ。
この時期、パガニーニはバイオリンソナタを書きまくっていた。ナポレオンが欧州を席巻し、ベートーヴェンが英雄交響曲を発表していた時代である。
とにかくバイオリンソナタ第何番という言い方はやめましょうということだ。
4.作品3の6の全曲を聞く必要はない
パガニーニのソナタは、緩徐楽章の第一楽章、アレグロの第二楽章からできているようだ。作品3の6といって演奏されるのは、通常は第一楽章のアンダンテだけである。
唯一、YouTubeで第2楽章を含めた全楽章が聞けるのが、下記の演奏である。
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